研究課題/領域番号 |
21K04870
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研究機関 | 大島商船高等専門学校 |
研究代表者 |
神田 哲典 大島商船高等専門学校, 電子機械工学科, 准教授 (80616079)
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研究分担者 |
遠藤 恭 東北大学, 工学研究科, 教授 (50335379)
室賀 翔 秋田大学, 理工学研究科, 准教授 (60633378)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | スピン波 / スピン軌道トルク / 強磁性共鳴 |
研究実績の概要 |
強磁性薄膜の局所領域で磁化の歳差運動を励起すると、周囲にその運動は伝搬し、スピン波とよばれる磁化運動の波が誘起される。スピン波の波源を複数形成すると、スピン波は伝搬先にある波源、すなわち局所的な磁化歳差運動と相互作用を起こす。本研究は非磁性金属に直流電流を流すことで生じる非磁性金属・強磁性体薄膜界面に生じるスピン軌道トルクを利用して複数箇所の磁化歳差運動励起源を形成し、それぞれの波源から発生するスピン波と磁化歳差運動間の位相同期現象を利用したスピン波共振器の創生を目指す。 今年度はマイクロマグネティクスシミュレーションを用いて、強磁性薄膜において局所歳差運動を励起するスピン軌道印加領域間にスピン波を介した相互作用の効果について検討した。具体的にはスピン軌道トルクの大きさを変化させるために単位面積あたりの電流密度の大きさを変数として、磁化歳差運動の励起に必要な閾値電流密度を評価した。その結果、スピン軌道トルク印加領域が1箇所の場合と比較して、2箇所の場合には閾値電流密度が10%程度下がることがわかった。さらに、印加領域間隔と閾値電流密度の関係を調べたところ、単調に変化せず、周期的な変動を示した。このことは、2箇所の領域間の相互作用はスピン波を介在していること、さらに、スピン波と間隔の位相が関与することを示唆する結果である。スピン波は磁化方向と波の進行方向によってその特性が異なるため、局所領域間の配置も上述の相互作用に影響を与えることが考えられる。そこで、配置についても基礎検討を行い、閾値電流密度が変化することを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画通り、マイクロマグネティクスシミュレーションにより、想定している局所歳差運動領域間のスピン波を介在した相互作用が示唆する結果が得られたため。
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今後の研究の推進方策 |
R3年度は実際の測定素子を作製するためのマイクロマグネティクスシミュレーションにより、期待している効果が得られることを示す結果を得た。スピン波は磁化方向と波の進行方向によってその特性が異なる。そこでR4年度は、局所領域間の配置依存性をさらに検討する。さらに、得られた知見を用いて、複数の局所歳差領域を有する素子作製とその特性評価を実施する。並行して、本研究の肝である現象であるスピン波と局所歳差運動領域間の相互作用について定量評価も検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定から学会参加時の日程変更のために次年度使用額が生じた。次年度に参加予定の学会旅費として使用する計画としている。
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