現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度前半は主として成果発表に注力し論文投稿および学会での発表を行った。成果はOsamu Endo, Fumihiko Matsui, Satoshi Kera, Wang-Jae Chun, Masashi Nakamura, Kenta Amemiya, and Hiroyuki Ozaki, Journal of Physical Chemistry C2022, 126, 15971-15979や14th International Symposium on Atomic Level Characterizations for New Materials and Devices '22などで報告した。金表面でのペリレンのイオン化は金に直接結合した臭素による仕事関数の上昇が引き起こしていると考えられるため、臭素のK吸収端近傍X線吸収微細構造分光法(Br K NEXAFS)による解析を行った。金表面における臭素のXAFS測定では臭素の蛍光と金基板からの散乱光が分離できるかどうかが問題であったが、全反射入射条件と高分解能シリコンドリフト検出器(SDD)を適用することで実現した。金表面に吸着したペリレン層に大気中で臭素を暴露し測定を実施したところ1s→4p遷移が大きく観測された。これは4p軌道に空きを有する臭素分子に帰属できる。この試料を簡易ポンプで排気するとスペクトルが変化し、残存した臭素のスペクトルでは1s→4p遷移が表面平行のs偏光でのみ観測された。このスペクトルは金表面に臭化物イオンを吸着させたスペクトルと類似しており、金表面において臭素は金原子と一部共有結合的な吸着をしていると考えらる。走査トンネル顕微鏡観察については試料作成チャンバー内の加熱機構がうまく働かず実験データを得るまでに至らなかった。
|