研究課題
本年度では、軽元素系原子層物質である六方晶窒化ホウ素原子層に着目し、構造安定性や電子状態を調べた。窒化ホウ素原子膜は、グラフェンなどの基盤材料として重要であることは知られているが、ここでは、窒化ホウ素原子膜の基本的な電子物性を明らかにするとともに、電子デバイスで用いる伝導チャネルとして応用すること念頭に研究を展開した。特に、三層系窒化ホウ素に着目して研究を行った。得られた成果は、以下の通りである。(1)三層系窒化ホウ素は、二層系よりも極めて多様な積層構造を持つため、エネルギー的に安定に存在しうる可能性のある10種類の積層について調べた。三層系構造では、一般的に窒化ホウ素バルクで観測されるaa'a積層よりもエネルギー的に安定な5種類の積層構造が存在することが分かった。(2)次に三層系窒化ホウ素の電子構造を調べた。エネルギーバンドギャップは、積層構造の違いに依存して大きく変化する。また、積層構造に依存して直接遷移型や間接遷移型ギャップに変化する。(3)さらに、炭素ドープによる影響を調べた。結果、伝導帯下端と価電子帯上端での広がった電子状態の分布と炭素不純物状態の分布から、電荷輸送層と不純物ドープ層の分離可能な積層構造が、数種類存在することが分かった。以上の結果は、六方晶窒化ホウ素原子層が、極めてエネルギー損失の低い伝導チャネル材料として有用であることを示している。これらの研究成果は、アメリカ物理学会誌Physical Review Materialsに出版された。
2: おおむね順調に進展している
原子膜物質h-BN層を用いた低エネルギー損失電子デバイスの安定構造の発見とそのメカニズムを明らかに出来た。
今後はこれまでの得られた結果を基に、更に低損失輸送デバイスに関する新たな構造の探索やそれらの機能を明らかにするための研究を推し進めていく。
参加を予定していた学会や国際会議などの学術講演会が中止となり、会議参加登録費等の支出が必要なくなったため。今後の使用計画として、主に研究を遂行するために必要な計算機利用料と研究成果を公表するための経費に割り当てる。
すべて 2022 2021
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 4件、 招待講演 1件) 図書 (1件)
Journal of Electrochemical Science and Engineering
巻: 12 ページ: 431-438
10.5599/jese.1243
Journal of The Electrochemical Society
巻: 169 ページ: 037512~037512
10.1149/1945-7111/ac5bab
Physical Review Materials
巻: 5 ページ: 094003_1-11
10.1103/PhysRevMaterials.5.094003
Communications Materials
巻: 2 ページ: 1-8
10.1038/s43246-021-00184-5