研究課題/領域番号 |
21K04876
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
藤本 義隆 九州大学, 工学研究院, 特任准教授 (70436244)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 原子膜系物質 / グラフェン / 窒化ホウ素 / ナノチューブ / 第一原理輸送計算 |
研究実績の概要 |
前年度においては、グラフェンの基板材料として用いられる軽元素物質である窒化ホウ素原子膜の構造安定性と電子構造を調べ、窒化ホウ素原子膜が低損失伝導チャネルとして有用な物質であることが分かった。本年度は、窒化ホウ素ナノチューブの原子構造、電子構造及び輸送特性に関して研究を行った。特に、窒化ホウ素ナノチューブを用いた半導体デバイスの伝導チャネルとしての基礎物性を明らかにするとともに、高効率輸送デバイスを設計するための指針を獲得することを目的として、窒化ホウ素原子膜研究を展開した。ここでは、二層系窒化ホウ素ナノチューブに関する研究を行った。二層系チューブには、ナノチューブの選び方に任意性があるため、バンドオフセットがチューニングされる様にそれぞれのチューブを選んだ。また、二層系ナノチューブには、外側と内側の2種類のチューブが存在するが、それぞれに、不純物をドープした。得られた結果は、次の通りとなる。二層系ナノチューブのバンドギャップは、それぞれの単層チューブのバンドギャップよりも小さくなった。単層のチューブに不純物をドープした場合よりも、二層系チューブにドープした方が、不純物状態は浅い。二層系チューブにおいては、外側のチューブに不純物をドープした場合の方が、内側のチューブにドープした場合よりも浅い不純物状態が出現することが分かった。更に、二層ナノチューブの輸送特性について調べた。内側のチューブに不純物がドープされた場合は、輸送効率は、最大で40%程度低下する。一方、外側のチューブに不純物がドープされた場合、輸送効率は低下することなく、ほぼ100%を保つことが分かった。このことから、不純物が外側にドープされたチューブを持つ二層ナノチューブは、エネルギー輸送効率の極めて高いデバイス材料として有用であることが予想される結果を得た。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
軽元素で構成される原子膜物質群を用いた高効率電子輸送デバイスのメカニズムを明らかにしたため。
|
今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策として、これまでに得られた知見を用いて、輸送効率の高いデバイスを実現するために、構造特性や機能を明らかにしていく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
参加を予定していた学会や国際会議が延期や中止のため、会議参加費等の支出が不要になったため。 今後の使用計画として、研究を推し進めるために必要となる計算機利用料や、研究成果を公表するための経費として使用する。
|