研究課題/領域番号 |
21K04879
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
柚原 淳司 名古屋大学, 工学研究科, 准教授 (10273294)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 14族ポストグラフェン / 二次元物質 / 蜂の巣構造 |
研究実績の概要 |
最終目的であるプランベンの幾何構造や電子物性の解明に向けて、Al(111)表面上のゲルマネンの創製および幾何構造や電子構造の解明を行なった。 Al(111)表面上のゲルマネンは、Ge(111)基板上に100nmのAl(111)薄膜を作製し、超高真空中下で加熱することでGe原子を表面偏析させて創製した。先行研究では、Al(111)表面上のゲルマネンは、真空蒸着法により作製できることが報告されていたが、本研究では、表面偏析法においてもゲルマネンが生成できることを明らかにした。 詳細は以下の通りである。走査型トンネル顕微鏡(STM)による原子スケールその場観察と低速電子回折やオージェ電子分光法を組み合わせて、先行研究と同様の構造が形成されていることを明らかにした。あいちシンクロトロンにて、Ge 3dやAl 2pからの内核準位由来の光電子エネルギーの高分解スペクトル(PES)を測定し、また、角度分解光電子分光(ARPES)によりのフェルミエネルギー近傍における電子構造のエネルギー運動量分散曲線を測定した。密度汎関数理論(DFT)に基づく第一原理計算により、全ネルギー計算から幾何構造を明らかにし、STMシミュレーション像や高分解能PESにおける成分数や成分比と比較した。電子構造についてもDFT計算を行い、ARPESによる実験結果と比較考察をした。電子の局在関数の可視化も行い、ゲルマネンと第1層のAl(111)表面の間に一部の電子は局在していることから、ゲルマネンとAl(111)表面との相互作用がそれなりに強いことが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
最終目的であるプランベンの幾何構造や電子物性の解明に向けて、今年度はAl(111)表面上のゲルマネンの創製および幾何構造や電子構造の解明を行なった。ゲルマネンの創製と幾何構造や電子物性の解明を通して、今後、チャレンジするプランベンの幾何構造や電子物性の解明に向けて多いに役立つ成果が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
Pd-P合金薄膜表面上のプランベンの幾何構造や電子状態を明らかにする。幾何構造は、原子スケールSTM像と密度汎関数理論に基づいた構造モデルの最適化計算から明らかにする。第一原理計算はVASPを用いる。電子状態は、放射光施設にて角度分解光電子分光にて決定する。また、上述の計算コードを用いて、上記で決定した構造モデルについて電子構造を計算する。これら実験と計算機シミュレーションの両面からプランベンの電子状態を解明する。さらに、プランベンとPd-Pb合金薄膜表面との化学的相互作用を内核光電子分光実験および計算機シミュレーションにより明らかにする。
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