今年度は、プランベンのエッジの電子状態、超伝導の有無、近接効果による機能発現の可能性について調べた。試料は、基板としてPd(111)単結晶を使い、その表面をPd-Pb合金薄膜化することで、偏析成長により鉛からなるハニカムナノシート(プランベン)を作製した。 プランベンのエッジの電子状態の測定は、極低温走査型トンネル顕微鏡・分光法により測定した。今回はPd(111)基板に由来するステップのエッジに注目し測定を行った。ステップエッジではプランベンの周期性が途切れるため、エッジの電子状態について調べることができる。ステップエッジをまたぐように観察、測定を行ったところ、エッジ近傍においてVs=-100 mVに大きなピークが観察された。測定位置がエッジから離れるにつれてピークが小さくなっている様子が観察されたことから、このピークはエッジ特有の電子状態であると結論づけた。 超伝導性について明らかにするために、測定するエネルギーの範囲を狭めてSTSの測定を行った。超伝導体のSTSスペクトルには、0 Vを中心に半値幅にして数 mVのディップが現れるため今回は±10 mVの範囲で測定を行った。0Vを中心とするディップが観察され、超伝導ギャップが形成し始めている可能性が示唆された。今後は、試料温度依存性や磁場依存性を調べ、超伝導ギャップなのかどうか明らかにする必要がある。 加えて近接効果によるプランベンの超伝導性の向上のために少量の鉛やスズの蒸着を行い三次元島の作製を試みた。どちらの場合も、半径が約10 nm、高さが1層分の大きさの島が形成された。先行研究と比べて島の大きさは小さいものの、プランベンの超伝導性を向上させることができる可能性があると考えられる。
|