研究課題/領域番号 |
21K04889
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研究機関 | 国立研究開発法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
竹端 寛治 国立研究開発法人物質・材料研究機構, エネルギー・環境材料研究拠点, 主幹研究員 (50354361)
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研究分担者 |
徳永 将史 東京大学, 物性研究所, 准教授 (50300885)
今中 康貴 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 技術開発・共用部門, 副部門長 (70354371)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 強磁場テラヘルツ分光 / ビスマス関連物質 / ランダウ準位間共鳴光学遷移 |
研究実績の概要 |
本研究では、ビスマスおよびBi1-xSbxのトポロジカル絶縁体相(0.07 < x < 0.22)を含む幅広い組成範囲の純良な単結晶試料に関して新たに開発する“反射型”強磁場テラヘルツ分光装置を用いランダウ準位間共鳴光学遷移の測定を行い、バルク状態の電子状態だけでなくトポロジカル表面状態の特徴的な電子状態に関する知見を得ることを目的としている。 本研究実施計画では、初年度であるR3年度に(1)“反射型”強磁場中テラヘルツ分光測定装置の開発、および(2)開発された測定装置を用い単結晶ビスマスのランダウ準位間光学遷移の測定に取り組むことを計画していた。(1)については本研究採択以前から準備を進めていたこともありR3年度早期に測定プローブを完成させることが出来た。完成した測定装置を用いて(2)単結晶ビスマスに関して3結晶軸方向に磁場を印可しながら反射型強場中テラヘルツ分光測定を行い、それぞれの結晶軸方向において磁場とともにエネルギーシフトする複数のブランチを観測した。磁場中Drude-Lorenzモデルを用いて測定スペクトルをフィッティングすることで共鳴エネルギーを正確に見積もった結果、その磁場依存性がDirac電子的なものとほぼ線形なものの2種類あることがわかり、前者はL点電子ポケット、後者はT点ホールポケットにおけるランダウ準位間共鳴遷移に起因すると考えられた。ランダウ準位の理論計算と光学遷移選択則を考慮することで観測されたブランチのほとんどはバルク状態のランダウ準位間共鳴遷移に因るものと同定することが出来た。一方、バルク状態のランダウ準位間遷移として説明出来ないブランチがあることが見いだされ、そのメカニズムの解明に興味が持たれ今後の研究の進展に期待している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上述のように、本研究初年度であるR3年度には、研究実施計画に従い、主に(1)“反射型”強磁場中テラヘルツ分光測定装置の開発、および(2)開発された測定装置を用い単結晶ビスマスのランダウ準位間光学遷移の測定に取り組んだ。(1)についてはR3年度早期に測定プローブを完成させ、それを用いて(2)単結晶ビスマスに関して3結晶軸方向に磁場を印可しながら反射型強場中テラヘルツ分光測定を行った。その結果、それぞれの結晶軸方向において磁場とともにエネルギーシフトする複数のブランチを観測し、さらに解析の結果、ほとんどのブランチはバルク状態のランダウ準位間共鳴遷移に起因すると同定するなどの研究成果を得た。 本研究の全体的実施計画の観点では、初年度に予定されていた実施計画は十分に達成し、かつ次年度以降の計画遂行に繋がる研究成果を挙げることが出来た。従って、本研究の現在までの進捗状況としては、ほぼ研究実施計画通りに順調に研究を推進することが出来たと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
上述のように、初年度であるR3年度中には本課題の実施計画における(1)および(2)に関して計画通りに推進し十分な成果を得て達成することが出来た。この状況を受けて、R4年度以降の推進方策としては、当初の研究計画通りに実施計画における(3)トポロジカル絶縁体相を含む幅広い組成範囲における単結晶Bi1-xSbx試料に関してランダウ準位間光学遷移の測定 に着手する。(3)においては、数種類の組成の異なるBi1-xSbx単結晶試料に関して“反射型”強磁場中テラヘルツ分光測定によるランダウ準位間共鳴光学遷移を測定し、特にトポロジカル絶縁体相(0.07 < x < 0.22)におけるバルク状態に加えてトポロジカル表面状態のランダウ準位間光学遷移の測定を目指す。トポロジカル表面状態のランダウ準位構造はバルク状態のそれとは異なると考えられるのでバルク由来以外の共鳴遷移がトポロジカル表面状態由来と同定される可能性を持ち、バルク状態からの差異によりトポロジカル表面状態の電子状態に関する知見が得られると考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 本研究の当初の研究実施計画においては、R3年度には主に“反射型”強磁場テラヘル ツ分光測定のための測定プローブ開発に研究費を使用する計画であった。 しかし、既存の“透過型”測定プローブを一部改造することで十分精度の高い測定が可能であることが実証できたため当初予定したほどは研究費を使用せず、次年度使用額が発生した。 (使用計画) 今年度は、前年度に引き続き“反射型”強磁場テラヘル ツ分光測定のための測定プローブの改良を行う予定であり、そのための放物面集光鏡など光学部品を購入予定である。また今後、複数個の組成の異なる試料の測定を計画しており、測定に必要な液体ヘリウムなどの寒剤費に予算支出を予定している。
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