研究課題/領域番号 |
21K04893
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
竹内 大輔 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エネルギー・環境領域, 副研究センター長 (10357402)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 拡散長 / ダイヤモンド / 負性電子親和力 / NEA / ワイドバンドギャップ半導体 / 電子放出機構 / TPYS |
研究実績の概要 |
半導体として優れた物性値を持つダイヤモンドは、ゼロエミッション社会を実現し高度化する時代のパワー半導体材料として期待されている。また、Society5.0を支える超高感度センサ技術や不可侵情報セキュリティ技術を実現する量子デバイス材料として期待されている。一方、Siの5倍のバンドギャップを有するダイヤモンド半導体のキャリヤ寿命や移動度に関する評価は容易ではない。そこで本提案では、他の半導体には無いダイヤモンドの持つ負性電子親和力(NEA)表面を通じた結晶内部からの電子放出現象を利用した新たな非破壊拡散長評価法を構築し、同法を用いた大面積ダイヤモンド半導体の結晶品質評価の高度化を目指す。本評価法により、ダイヤモンド半導体の個体間の定量的比較を容易にし、種々の応用に向けた品質の客観的指標を与えることが出来る。 今年度は、(100)Ib型ダイヤモンド基板上にCVD合成し、異なる膜厚の試料のTPYS評価を進め、拡散長等各パラメータを抽出して分析を行うことを目的に、50μmのノンドープCVD厚膜を合成した。成長直後の表面観察から、試料中央と周辺において膜厚分布があるため、計画に沿った分析のために必要な加工の準備を検討するため、詳細な形状観察を進めた。コロナ禍と地震の影響により装置の修理と実験の後ろ倒しが必要となり、拡散長見積もりのデータとなるTPYS評価は来年度に進める状況である。 一方、低リンドナー濃度n型高品質薄膜の評価において、本研究の基本となる結晶内部からの電子放出スペクトルを世界で初めて観測した。ダイヤモンドNEA電子放出機構の総括を可能とする成果である。TPYS評価を通じて異なる濃度の試料の結果を比較し、国際学会への発表を予定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍で実験室使用の時間的制約があったため、CVD薄膜成長やその評価が想定の3倍の時間を要する状況であった。また、年度末の地震の影響で、評価装置の修理・調整が必要となり、同じく時間制約のある中で、計画に遅れが生じた。一方、当初計画では予期していなかったn型からのNEA電子放出の世界で初めての結果が得られた。一進一退、という状況として区分を選択した。本質的な障害は無いと判断しており、当初計画通りに進めていく。
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今後の研究の推進方策 |
・ノンドープ厚膜試料について、TPYSによるNEA電子放出の確認を急ぐ。合わせて、ドライエッチングによるTPYSの影響について、別途試料を用いて確認を急ぐ。 ・同時に、厚膜試料のドライエッチングと膜厚見積もりの方法の再検討を急ぎ、測定を繰り返して行う。 ・(111)ノンドープ厚膜試料についても合成を進め、同じ内容で実験を進める。 ・新たな発見であったn型の結果については、発表・論文化を進める。
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