研究課題/領域番号 |
21K04902
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
小泉 晴比古 広島大学, 統合生命科学研究科(生), 准教授 (10451626)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | タンパク質結晶 / 高品質化 / 水和構造 |
研究実績の概要 |
溶液成長は,パワーデバイスであるSiCから有機高分子であるタンパク質の結晶化まで、極めて幅広い分野で用いられており、重要な技術となっている。このため、溶液から成長する様々な材料における結晶の完全性を制御するための普遍的なプロセスを構築するためにも、溶液成長における結晶成長機構の解明は重要となる。溶液から結晶が成長する際には、溶液に存在する分子は多数の水分子で囲まれた水和状態にある。それらが結晶に取り込まれるには、水のジャケットを脱ぐ必要がある。つまり、溶液成長では各々の過程において脱溶媒和過程が存在し、この過程の存在が溶液成長を特徴付けている。 近年、応募者はタンパク質分子周りに配位した水分子の動き(溶媒和のダイナミクス)が速いほど、育成される結晶の完全性が向上することを明らかにした(H. Koizumi et al., Crystal Growth Des. (2018).)。そこで、本研究では、結晶表面の界面近傍のダイナミクスを含む溶媒和構造の実態を分子レベルで直接的に捉え、溶媒和構造と結晶の完全性との相関を明らかにすることを目的としている。 タンパク質結晶内に含まれる水分子の状態は、ラマン散乱測定により同定できることが知られている。そこで本研究では、結晶内に存在するタンパク質分子周りに結合した水分子の結合状態に注目し、ラマン散乱測定を行った。結果として、水分子のダイナミクスが速くなるほど、タンパク質分子周りに結合する水分子の量が減少し、かつ、結合水に関与する振動モードの半値幅が減少することが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、結晶表面の界面近傍のダイナミクスを含む溶媒和構造の実態を分子レベルで直接的に捉え、溶媒和構造と結晶の完全性との相関を明らかにすることを目的としている。本年度は、ラマン散乱測定によりタンパク質結晶内に含まれる水分子の状態を定量化することができ、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、ラマン散乱測定によりタンパク質結晶内に含まれる水分子の状態を定量化することが分かった。そこで、次年度より、偏光顕微鏡観察やX線回折によるロッキング・カーブ測定といった様々な手法を用いて、育成された結晶の完全性を評価し、結晶内の水和構造と結晶性との相関を明らかにしていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和3年度に購入を計画した超純水製造装置一式が、10月にセールが行われたため、購入金額を大きく節約できたため、残額は次年度への繰り越しを行った。未使用額を用いて、X線回折データの解析装置の充実を図る。
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