研究課題/領域番号 |
21K04906
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
市野 邦男 鳥取大学, 工学研究科, 教授 (90263483)
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研究分担者 |
阿部 友紀 鳥取大学, 工学研究科, 准教授 (20294340)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ワイドバンドギャップ半導体 / バンド端エネルギー / 電気伝導型 |
研究実績の概要 |
本研究では,ワイドバンドギャップ硫化物半導体,とくにZnS系半導体において,その価電子帯の深いエネルギー位置が電気伝導においてp型が得られにくい単極性に大きく関与しているとの考えに基づき,バンド端エネルギーと電気伝導性との関係を明らかにし,ワイドバンドギャップと実用的なp型特性を両立することを目指している.さらには他の材料系にも適用可能性のある知見を蓄積することを目的としている.令和3年度の実績概要を以下に示す. (1) p型ZnSTe:Nにおける正孔濃度のTe組成依存性の詳細検討 ZnSにTeを加えた混晶とすることで,ZnSでは得られなかったp型伝導が得られる傾向が従来得られていたが,詳細については未解明の点があった.その検討にあたり,p型伝導性に影響を与える要素として,Te濃度以外にも結晶性の影響が示唆されていた.そこで,下記(2)と並行して取り組むことで,ZnSTe:N結晶においても組成制御の安定化,結晶の高品質化を図った.その結果,これまでよりも広いTe組成範囲10-50%でp型伝導が得られ,また10-40%ではTe組成とともに最大導電率が上がる傾向が確認できた. (2) 高品質ZnMgSTe 4元混晶の作製条件の検討 ZnMgSTe 4元混晶の結晶成長においては,陽イオンのZnとMg,陰イオンのSとTeの間でそれぞれ組成を制御する必要がある.分子線エピタキシーによる結晶成長において,Sに対してTeは結晶に取り込まれにくいので,Sの分子線強度を小さくする必要がある.しかしそうするとZnとMgの組成制御が難しくなる,というトレードオフがあることがこれまでの研究から判明している.そこで,各成長条件をより精密に細かく制御することで,組成制御を安定化し結晶を高品質化した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ZnSTe:Nにおけるp型電気伝導特性の評価,とくに品質を改善した結晶におけるTe依存性の評価,また並行してZnSTe・ZnMgSTe結晶の組成制御性・結晶品質の向上など,本研究の基礎となる部分について進展が得られた.これらの点から,おおむね順調に進展していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
研究実績の概要で述べた(1),(2)の項目を引き続き進展させるとともに,当初計画に従い以下の項目に取り組む. (3) p型ZnMgSTe:Nにおける正孔濃度のTe,Mg組成依存性の検討 (4) 電気伝導性決定モデルの検討 (5) p型ZnMgSTeにおける正孔濃度およびバンドギャップの最適化
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次年度使用額が生じた理由 |
令和3年度において,消耗品の消費状況が予定とわずかに異なったため,発注時期が次年度となり若干の残額が生じた.しかし,研究計画に基づいて,令和4年度中に有効に使用する予定である.
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