研究課題/領域番号 |
21K04908
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
鈴木 良尚 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(理工学域), 准教授 (60325248)
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研究分担者 |
佐藤 正英 金沢大学, 学術メディア創成センター, 教授 (20306533)
佐崎 元 北海道大学, 低温科学研究所, 教授 (60261509)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 沈殿剤フリー / 結晶構造解析 / グルコースイソメラーゼ / ニワトリ卵白リゾチーム |
研究実績の概要 |
初年度に計画していた、ニワトリ卵白リゾチーム(HEWL)斜方晶結晶の、Na+サイト周辺で、NaCl濃度の変化に伴う電子密度の変化を、より一般的に得られるHEWL正方晶系結晶について、全て常温で行い、第51回結晶成長国内会議にて発表した。予想通り、NaCl濃度とともにHEWL分子中のNa+の電子密度が大きくなる結果が得られたが、活性部位においては、有意な構造の変化は見られなかった。その一方で、既にProtein Data Bank(PDB)に報告されている、極低温における構造との間には大きな変化が見られた。特にASN59のアミノ残基の位置は3.0Å程ずれていた。それに対して、グルコースイソメラーゼ(GI)については、活性部位についての大きな変化は見られず、あくまでも分子全体としての個々の原子位置についての平均二乗変位(RMSD)についての温度変化が0.2Å程度のオーダーにとどまっていた。 その一方で、超濃厚溶液における成長速度の大きな促進に関してはHEWL正方晶系結晶については一桁程度にとどまった。詳細な速度データを集めるには至っていないため、決定的なことは言えないが、テトラマーが成長単位の成長ユニットのGIに比べ、HEWLのモノマーは非対称性が大きいことによると考えている。 成果のアウトプットとしては、Crystal Growth & Design誌に、ステップ前進速度に及ぼす微小重力効果について、CrystEngComm誌に、引力系コロイド結晶におけるkink取り込み過程の活性化エネルギーについての報告を行った。また、タンパク質分子の単純化モデルとしてパッチ粒子の相互作用と結晶構造の相関について、シミュレーションした結果をScientific reports, Langmuir誌に投稿した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
全て同じ常温の状態での、HEWL分子中のNa+が構造として観測されるNa+サイトにおいて、NaCl濃度依存性を測定することに成功はしたが、そこから先の定量的な評価については、誤差範囲を決めるため、測定数を増やす必要がある。そこはまだ実現できていない。もしくは高分解能のデータを目指す為に、結晶の大型化を試みる必要がある。GIについては、成長速度の大幅な促進による大型化に成功しているが、HEWLに関してはそこまでの大型化に成功していない。工夫が必要である。 また、より本質的な、水和構造を含めた構造変化の確認法として、中性子構造解析を検討している。GI結晶については、中性子構造解析の専門家に打診したところ大きさとしては十分である旨回答をもらっているが、HEWLについてはまだ検討が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、同じ結晶で常温での測定数を増やし、構造のばらつきを定量的に評価できるようにする。また、より大型化、高品質化およびハンドリングフリーによる回折データの品質保持に努め、定量的な評価をバックアップできるようにする。 温度依存性については、同一結晶における、常温保湿状態およびフラッシュクーリングによる極低温測定条件の測定を目指した技術を目指す。 また、新型コロナウイルスのメインプロテアーゼの予備実験として、パパインの構造の塩濃度、温度依存性について、2023年度に集中して実験を行い、論文化を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初,2022年度は通常の学会開催が増えたとはいえ,オンラインの学会も多く,見込んでいた旅費が使用できなかった。この現状と課題申請時に参加予定していた国際会議が2023年度に延期になったことを踏まえ,無理に予算計画を変更して使用はせずに,この学会の参加への使用なども考えている。
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