研究課題/領域番号 |
21K04910
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
上田 修 明治大学, 研究・知財戦略機構(生田), 研究推進員(客員研究員) (50418076)
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研究分担者 |
富永 依里子 広島大学, 先進理工系科学研究科(先), 准教授 (40634936)
塩島 謙次 福井大学, 学術研究院工学系部門, 教授 (70432151)
池永 訓昭 金沢工業大学, 工学部, 准教授 (30512371)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | Bi系半導体混晶 / MBE / 低温成長 / 結晶欠陥 / THz波受送信素子 / 欠陥評価 / TEM |
研究実績の概要 |
令和4年度は、研究計画に沿って研究を進め、以下の成果が得られた。 (1)低温成長GaAsBiの分子線エピタキシャル(MBE)成長において、基板の温度を180℃と250℃にそれぞれ設定するだけで、非晶質層と単結晶層を作り分けることに成功した。MBE成長時のGaとAsの鍵となる分子線量比率を見出し、Bi原子が均一に取り込まれた非晶質GaAsBiと単結晶GaAsBiを得た。また、この単結晶GaAsBiのX線回折カーブにおいては干渉フリンジが確認でき、低温成長であっても比較的原子の乱れの少ない単結晶層が得られていることを明らかにした(Y. Tominaga et al., APEX, 15, 045504 (2022))(富永)。 (2)低温MBE成長GaAsBi結晶層(成長温度250℃)及び非晶質層(成長温度180℃)を熱処理したものを透過電子顕微鏡法(TEM)により解析した結果、以下のことを明らかにした。GaAsBi結晶層では、600℃熱処理によりAs析出物が薄膜/(001)GaAs基板界面近傍に、また、GaAsBi及びBi析出物が一様に形成される。一方、GaAsBi非晶質層の場合には、350℃熱処理ではエピタキシャル層とその上に多結晶層が形成され、薄膜/基板界面近傍にAs及びBi析出物が形成されるのに対し、600℃熱処理では全層単結晶となり界面近傍にBi析出物のみ形成される(上田、池永、富永)。 (3)低温MBE成長GaAsBiに対してフォトレスポンス(PR)測定を行った。光電流信号強度だけでなくロックイン検出の位相差に着目することにより、基礎吸収と欠陥に起因するスペクトルの裾野を分離して評価することに成功した。これまでの本手法を用いた研究成果が評価され、ECS主催の国際会議で招待講演、招待論文、応用物理学会先進パワー半導体分科会個別討論会で講師の栄誉を得た。(塩島、富永)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度は、1)GaAsBiの低温MBE成長において、成長温度を制御することで非晶質層と単結晶層を作り分けることに成功した。2)また、単結晶および非晶質GaAsBi層の高温熱処理により、As析出物、GaAsBi析出物、及びBi析出物の形成状況が異なることを初めて明らかにした。3)さらに、低温MBE成長GaAsBiのフォトレスポンス(PR)測定の手法を確立できた。このように、全体として、おおむね当初の計画通り研究が進められたと考える。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度においては、計画通りの成果が得られたので、次年度は、GaAsBiおよび新規にInGaAsBi薄膜についても、当初の計画に従って、微細構造と欠陥の評価、電気的、光学的特性評価の研究を進めて行く。具体的には、以下の項目を遂行する。1)GaAsBi薄膜のさらなる低温成長・熱処理実験(非晶質層からの固相成長を含む)および結晶評価(TEMによる微細構造及び欠陥の評価及び電気的、光学的特性評価)、2)GaAsBiよりも高抵抗を得るのに有利なInGaAsBi薄膜の低温成長・熱処理実験および結晶評価。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度に予定していた、国内学会出張および共同研究先出張がコロナ禍の影響で中止となり、不使用となったため。次年度は、予定している使用計画の他に、対面式の国内学会等の参加に伴う出張、共同研究先の出張の費用、材料費等に充当する。
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