研究課題/領域番号 |
21K04913
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研究機関 | 国立研究開発法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
末廣 隆之 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 機能性材料研究拠点, 主任研究員 (20421406)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 窒化物 / 多元系化合物 / 光触媒 / 水分解 |
研究実績の概要 |
本年度より、開発したLi1-xZnxGe2-xGaxN3を用いた水分解反応による水素生成および酸素生成のテストリアクションに着手し、太陽光スペクトル下における光触媒特性を検証した。これまでに開発したx=1の端組成に相当するZnGeGaN3は3.03 eVの可視域にバンドギャップを有し、AM1.5Gの太陽光スペクトル照射下で約10および296 μmol/hの水素および酸素生成速度を示すことが確認された。一方、4.16 eVのバンドギャップを有するx-=0の端組成であるLiGe2N3は紫外光照射下では約127および52 μmol/hの比較的高い水素および酸素生成速度を示したが、AM1.5Gの太陽光照射条件下における水素および酸素生成は検出されなかった。今回開発した五元系固溶体に対し、x=0.05から0.90の組成範囲でAM1.5G照射下における触媒特性の系統的な評価を行った結果、酸素生成速度はバンドギャップの増大に従い、x=0.90における276 μmol/hからx=0.05における3 μmol/hまで単調に減少することが確認された。他方、水素生成速度は3.72 eVのバンドギャップを示すx=0.10組成付近から有意な上昇が観測され、x=0.50-0.80組成において約52から57 μmol/hの最大値に達し、x=0.90組成ではZnGeGaN3に近い約8 μmol/hまで低下する結果となった。本研究で開発したLi1-xZnxGe2-xGaxN3五元系ウルツァイト窒化物では、従来にない高次多元化に基づく広範な組成制御の実現により、水素生成特性に優れるLiGe2N3への太陽光スペクトル応答性の付与と、ZnGeGaN3における高い酸素生成活性の維持がx=0,50-0.80の最適組成条件下で達成され、理想的な水の量論分解を可能とする太陽光応答型光触媒の新規開発に有望な結果が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の研究計画に基づき、独自の合成手法を用いて新規な高次多元系ウルツァイト窒化物を合成することに成功した。当初の研究計画に従い、開発材料のキャラクタリゼーション手法を確立し、光触媒特性の評価に着手することが出来たが、より多くの新材料開発に向けて研究を加速する必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き独自の物質探索指針に基づき、高効率な水分解光触媒として有望な高次多元系ウルツァイト窒化物の創出に関する研究を推進する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当年度導入装置の購入価格の変更により、物品費に未使用額が生じた。 今後費用の発生が見込まれる消耗品類に当年度未使用額を充当する予定である。
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