研究初年度に新規五元系ウルツァイト窒化物Li1-xZnxGe2-xGaxN3を開発し、結晶構造解析、組成分析、および光学特性の測定等により基本物性を明らかにした。本系において約4.2 eV (300 nm)の紫外域から約3.0 eV (410 nm)の可視光域に至る広範なバンドギャップ制御が可能となることが示され、太陽光スペクトルへの応答性が期待出来る光学特性が達成されたことを確認した。 次年度からは、開発したLi1-xZnxGe2-xGaxN3を用いた水分解反応による水素生成および酸素生成のテストリアクションに着手し、太陽光スペクトル下における光触媒特性を検証した。従来にない高次多元化に基づく広範な組成制御の実現により、水素生成特性に優れるLiGe2N3への太陽光スペクトル応答性の付与と、ZnGeGaN3における高い酸素生成活性の維持がx=0.80の最適組成条件下で達成され、太陽光応答型水分解光触媒の新規開発に有望な結果が得られた。 本研究最終年度は、開発したLi1-xZnxGe2-xGaxN3の光触媒特性の最終評価として、最適組成であるx=0.80に関する耐久性の検証と量子効率の測定を実施した。x=0.80組成に対し犠牲試薬存在下で48時間に至る水素生成試験を行った結果、最終的な水素生成量は約1.68 mmolに達し、48時間測定後の外部量子効率は380 nm励起下において約2.1%であった。 本研究において粉末中性子回折およびX線回折データの解析により得られた、端組成のLiGe2N3およびx=0.90の五元系組成に関する新規結晶構造データはCambridge Crystallographic Data Center (CCDC)へのデポジットを完了するとともに、上記研究結果は本年Inorganic Chemistry誌上で公表が予定されている。
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