研究課題
本研究課題では完全に温度無依存な半導体レーザ実現のため、Bi系半導体量子ドットの形成法を確立することを目的とする。2023年度はBiを照射した量子ドットレーザの発振波長の温度無依存化のメカニズム解明のため、量子ドットレーザの利得スペクトルの温度依存性に関する研究を行った。InP系材料におけるBi照射量子ドットレーザの作製では少量のBi混入の期待できる温度領域(380℃)で量子ドットレーザを作製し、レーザ発振を確認した。この量子ドットレーザについて、ハッキ-パウリ法により利得スペクトルを求めた。また、温度変化に対する利得スペクトルの変化について詳細に調べた。Biを照射していないレーザ、照射したレーザについて利得スペクトルを測定したところ、両者とも最大で15/cmの利得ピーク値を持つことが明らかになった。両者がほぼ同じ値を持つことは、しきい値電流がほぼ同程度だったことと一致しており、矛盾の無い結果である。また、異なる温度で利得スペクトルを測定したところ、Bi照射なしの量子ドットレーザでは20℃から60℃の温度変化で約16.5nmのピークシフトを観測した。これに対してBi照射ありの量子ドットレーザでは、同じ温度変化において5.7nmのピークシフトであった。これらのことよりBiを照射した量子ドットレーザでは利得自体のピークシフトが小さいことが明らかになった。また、より高濃度のBi混入を目指し、低温におけるBi照射によりInGaAsP系の結晶成長と、低温成長による結晶性の劣化を回復するための、成長後アニールの検討を行った。低温成長によりBi混入濃度は数%まで増加したが、結晶品質の劣化による量子ドットの発光強度の低下が見られたが、これを500℃程度でアニールすることにより、発光強度の増加が観測された。この手法によりより高濃度のBiを有する量子ドットレーザ実現が可能であると考えられる。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件、 招待講演 3件)
Optics Letters
巻: 48 ページ: 3287-3290
10.1364/OL.493223