研究課題/領域番号 |
21K04916
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研究機関 | 室蘭工業大学 |
研究代表者 |
加野 裕 室蘭工業大学, 大学院工学研究科, 准教授 (80322874)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 表面プラズモン / 顕微測定 / 複屈折測定 / 光異性化薄膜 |
研究実績の概要 |
本年度は,集束表面プラズモンを用いて複屈折測定を行う装置の試作を行った.試作装置では,ラジアル偏光させた平行光を,高開口数の油浸対物レンズでクレッチマン配置(高屈折率ガラス/銀 /シリカ/試料)基板に集光し,反射光を,対物レンズの射出瞳と光学的に共役な位置に配置したイメージセンサーで強度測定する光学系を用いた.これにより,基板からの反射光の空間周波数スペクトルを取得し,画像解析によって,表面プラズモンの伝搬方向ごとの伝搬定数を測定する.試料として,一方向に張力を加えたパラフィン膜を用い,反射光空間周波数スペクトルの解析にって,光学軸の方位や常光線,異常光線に対する屈折率を求める動作検証を行った. 続いて,測定手法では,膜厚100nm程度の薄膜における複屈折分布を高感度に測定できることを示すため,基板表面に光異性化によって複屈折を示す材料(PAZO: poly[1-[4-(3-carboxy-4-hydroxyphenylazo)benzene-sulfonamide]-1,2-ethanediyl sodium salt])をスピンコートし,複屈折の顕微測定を行った.実験により,光異性化に伴う複屈折の発生(0.01程度)と消失をモニタリングできることを確認した. さらに,空間周波数スペクトルを記録するイメージセンサーの画素数を増大させ,より精密に複屈折を測定できるよう,装置の改良を行った.この改良においては,イメージセンサーの信号伝送をアナログからデジタル方式に変更したため,システムの制御ソフトウェアに大幅な変更を行った.この改良により,データ取得速度の向上も実現した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
集束表面プラズモンを用いて複屈折測定を行う装置の試作を行い,パラフィン膜を用いた動作検証を行った.さらに,基板表面に光異性化によって複屈折を示す材料(PAZO: poly[1-[4-(3-carboxy-4-hydroxyphenylazo)benzene-sulfonamide]-1,2-ethanediyl sodium salt])を基板表面にスピンコートし,複屈折の顕微測定を行った.光異性化に伴う複屈折の発生と消失をモニタリングできることを確認でき,測定手法が膜厚100nm程度の薄膜における複屈折分布測定において顕著な優位性を有していることを明らかした.以上より,研究計画は当初予定に沿って順調に進められている.
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今後の研究の推進方策 |
今後,生体細胞の複屈折測定に向け,表面プラズモン測定用基板表面での細胞培養を検討する.これまでの有機薄膜を用いた実験と異なり,基板には生体親和性が求められるほか,培養期間における基板の劣化を防ぐ必要がある.広く培養されている細胞を用いて,培養過程で生じる問題を明らかにする.たとえば,対細胞毒性の観点から,測定感度において優位性のある銀の利用が制限される可能性が考えられる.また,長期間の培養を想定すると,金属薄膜の劣化や剥離が問題となる可能性も考えられる.これらの潜在的な問題の評価,および問題解決に取り組む予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度に予定している細胞培養の実験に必要な物品(細胞,試薬など)の購入に,計画段階以上の経費が見込まれるようになったため,予定していたラジアル偏光コンバーターの新規購入を取りやめたことにより,次年度使用経費が発生した.
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