本年度は、どのような位相信号が近接しているときにエラーが生じやすいかを解析し、本手法特有のエラー特性の調査を行った。この結果をもとにエラーの出やすい位相信号を隣接しないように配置した新しい信号符号を構築した。結果的に、従来のエラー特性を考慮しない4値位相信号と比べて記録密度を1.16倍に改善することができた。以下では、本研究期間全体を通じて得られた研究成果の要点をまとめる。 (1)イタレーションを用いた位相決定法:本手法は、ピクセル拡がり関数との畳み込み積分を利用して、従来の位相決定法(最小値探索法)では考慮されていなかった遠方ピクセルの影響を考慮する方法である。本研究では、本手法の有効性の検証と性能評価を行い、初期位相依存性、考慮すべき遠方ピクセルの範囲、エラーの低減割合について調査した。結果、本手法はピクセル間クロストークノイズの大きな領域においてエラーの低減が期待でき、記録密度改善に大きく貢献しうることがわかった。 (2)偏光位相多値信号への拡張:本研究では、これまで位相変調信号のみを扱っていたところを、偏光と位相に情報にもたせた偏光位相多値信号へ信号符号の範囲を拡張し、シングルショットで偏光位相多値信号を取得する方法の提案を行った。ピクセル境界強度から電場の向きを判別する信号決定アルゴリズムをあらたに構築するとともに、強度検出を行う境界部分に偏光子を挿入することによりエラーを低減できることを見出した。 (3)新しい位相決定アルゴリズムの開発:いくつか存在する既存の位相決定アルゴリズムにおいてエラー解析をした結果、個々のアルゴリズムはそれぞれ誤検出をしやすい信号配置が異なることが判明した。この知見を基に、各境界強度の情報からよりエラーの出にくい位相決定アルゴリズムを選択する新しいアルゴリズムを構築し、エラーレートを約6割程度にまで減少することに成功した。
|