研究課題/領域番号 |
21K04927
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
角屋 豊 広島大学, 先進理工系科学研究科(先), 教授 (90263730)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 非エルミート / フォトニクス / 導波路 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,連続準位中束縛状態(Bound states in the continue; BIC)と例外点(Exceptional point; ExP)が共存するグレーティング結合導波路において,代表者らが理論的に発見した①2モードの反交差点で非Γ点BICが生じ,そのブランチが偏光やグレーティング厚さによってスイッチすること,②ExPが発生するグレーティング厚さが存在すること,③グレーティング厚さ依存性がグレーティング内のスリットにおけるファブリペロー(FP)共振で理解できること,等を実証することである.本年度はこのための素子の概念設計を行った.まず,検証のための風波数領域として,素子作製が容易であることや,金属による損失が少ないことなどの利点があるTHz領域に仮決定した.さらに,以前の理論予測では,単純な金属グレーティングを想定していたが,作製が困難となることから,薄膜金属グレーティング2層からなる構造を考案し,以前より用いてきた結合モード法による動作確認を行うとともに,計算精度を上げるための有限要素法ソフトウェア(COMSOL)を購入し,定性的には同様の結果が得られることを確認した.2層グレーティングとしたことで,設計の自由度が増した.また,設計によっては高効率な全反射光取り出しカプラになりえることを発見した.THz領域で金属及び層間誘電体膜の損失を考慮しても,70%以上の効率を予想している.このようなカプラは,室温動作可能な数少ないTHz光源である量子カスケードレーザーやパラメトリック発振器からの出力を大幅に向上させることが期待される.また,この高効率化の中で,空間対称性を崩すことで効率が向上することが見いだされている.これは単方向性のカプラにつながると考えられるが,本研究で検討対象としたExP単方向性カプラとの間に隠れた関係性があるのではないかと考えている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前記のように,本研究目的達成のための素子の大まかな設計と精密な設計の準備がととのったこと,さらに極めて重要な高効率カプラの着想を得たことなどから,おおむね順調に進捗していると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
2022年度はより詳細な設計,素子作製準備,および実証測定の準備を行う.詳細な設計に関しては,従来より用いている自作結合モード法プログラムと昨年度導入した市販の有限要素法ソフトウェア(COMSOL)を併用する.素子作製に関しては,実証における周波数領域をTHz領域としたため,フォトリソグラフィーで十分にパターン作製可能と考えているが,2層金属グレーティングのための層間絶縁膜の形成方法を確立する必要がある.材料としては吸収が比較的少ないベンゾシクロブテン(BCB)を想定している.この材料に関しては,以前にも用いた経験があるが,熱硬化条件などの再確認などが必要である.導波路部分の材料としては,吸収が少ない高抵抗Siを想定している.また,測定としては,THz-時間領域分光システムを用いることになる.基本的なシステムは既に保有しているが,本研究では反射測定となり,できれば角度可変としたいことから,かなり改造が必要である.その他,素子作製や測定の細部まで十分に検討した上で,年度内には実測を開始したいと考えている.本格的な測定と結果の分析等は2023年度に行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
主な理由はワークステーションが当初の予想よりも安価であったこと,およびCOVID-19蔓延等により出張(学会発表)がなかったことである.2022年度は素子作製にも着手することから,残額は消耗品の購入に活用する.
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