研究課題/領域番号 |
21K04929
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研究機関 | 東北工業大学 |
研究代表者 |
佐藤 篤 東北工業大学, 工学部, 教授 (00322686)
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研究分担者 |
石井 昌憲 東京都立大学, システムデザイン研究科, 教授 (70359107)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 固体レーザー / 中赤外 / パルスレーザー / 側面励起構造 |
研究実績の概要 |
当初の研究計画に従い、Hoレーザー励起用のTmレーザーの試作とその評価を行った。レーザー結晶はロッドタイプのTm:YLFとし、3方向側面励起構造のレーザーヘッドを構築した。光学設計上は、直径3mmのレーザーロッド断面内において中央の直径2mmの円形領域を強く励起する構造としていたが、実測した蛍光強度分布はこれとよく一致した。開発したTm:YLFレーザーヘッドを用いて実施したレーザー発振試験では、設計時の動作解析シミュレーションで想定されていたスパイク状のパルス発振が達成された。ただし、高出力電源の納期の延期により、最大励起エネルギーの半分での動作となってしまったため、小さい出力結合(出力鏡反射率97%)による発振しきい値付近での動作試験にとどまった。その結果、レーザー出力の確認は7mJまでとなったが、このデータを最適反射率及び最大励起エネルギーでの出力に換算すると、開発したレーザーヘッドで得られる出力は、目標の100mJを大きく上回ることが確かめられた。レーザー自体は設計通りに動作しているため、機材が整い次第、改めて高出力動作試験を実施する。Tmレーザー開発と並行して、共振器内励起レーザーの設計法について検討した。Tmレーザー共振器内励起Hoレーザーでは、Tmレーザーの出力結合は、Ho結晶の吸収スペクトルを反映した波長依存性をもつことになる。この条件の下、Tm:YLF及びHo:YLFの分光データを用いて、レーザーの成立性について検討した。解析の結果、Ho:YLF結晶を共振器内励起している時のTm:YLFレーザーは、π偏光では波長1.91μm付近、σ偏光では波長1.93μm付近で最も低しきい値となり、Ho結晶はTmレーザー光に対する吸収率が7~10%程度となるように選択する必要があることが明らかとなった。この結果を反映させ、Hoレーザーヘッドの開発に着手した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Tmレーザー開発は、予定通りに実施でき、レーザー発振も達成された。高出力LD電源の調達がメーカー側の都合で延期になってしまったが、実施できる実験条件下での評価では、レーザー設計時のシミュレーション結果と概ね矛盾はなく、開発自体は順調であると考えている。分光データとレート方程式を用いた共振器内励起レーザーの設計法も確立し、レーザーとしての成立性も確認できているため、次の段階であるHoレーザーの構築を進めている。一部、2022年3月に発生した地震の被害により交換が必要になった素子(半導体レーザー等)があるが、物品が揃い次第、すぐに復旧が可能である。また、Tmレーザーの調整中にセルフQスイッチと思われる現象が確認された。非常に興味深い現象であり、発振しきい値付近で実験できるため、今後も機会を見て挙動を観察したい。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は、当初の予定通り、2021年度に開発したTmレーザーを用いてHoレーザー実験とQスイッチ実験を実施する。ただし、最大励起条件付近で高出力動作にトライするのは、年度後半を予定している。Hoレーザー部の構築は、手持ちの結晶での予備実験から着手し、その後、解析結果及び予備実験結果を考慮し、最適化へと移行する。Qスイッチ実験は、AO Qスイッチを導入することにより行う。その他、実験等の実施内容については、研究計画通りに進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍での所属機関の出張制限あるいは入構制限により、東北工大での研究分担者の立ち合い実験や打ち合わせは実施を見合わせた。その分、旅費の繰り越しが発生したため次年度使用とした。その他、少額の残額が生じたが、次年度の実験での光学素子購入に充てることとした。
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