熱容量測定の誤差低減を目的として、タングステンパイプ内の試料の偏りや空隙の発生を抑制するための検討と対策を実施してきた。 空隙の発生原因は、最も高温になるタングステンパイプ中央部付近での溶融試料の散逸にあると考え、試料を溶融部分のみの数cmにだけ装填し、上は何も充填せず空の状態とし、下は一回り細いタングステン棒で支えるとともにパイプ上下を密封し内圧を保つことで蒸気圧の上昇による気泡の拡大を抑制した。この対策がうまくいくケースもあったが、より高温での測定時には隙間に流れ込んだり温度の低い位置に移動するなどの現象が起こり安定的な試料位置にはならなかった。最終年度には上下をほぼ同じ太さのアルミナで支持し、押さえることで、毛細管現象によってパイプと試料間の空隙に入り込む物を減らす取り組みと、上部にバネを配置し、上からアルミナ棒を押し込むことで中央部の空隙の発生抑制を試みた。その結果、空隙の発生を抑制できることは確認できたがタングステンパイプ中央部の空隙を完全に抑制することはできなかった。溶融後試料の断面観察からは最も高温になるパイプ中央よりも少し離れた位置に試料密度の高い部分があることがわかったため、今後はその位置の安定性を確認した後その部分を測定範囲とすることでより精度の高い熱容量測定ができると考えられる。 溶融後の試料観察においては、急冷した試料と2000℃程度で一旦焼鈍して徐冷した試料について断面観察を行った。その結果急冷試料では巣の入った組織が多く観察され、徐冷試料では緻密な組織が観察された。今福島第一原子力発電所から取り出されるデブリサンプルの形成過程に関する情報を与える結果が得られた。
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