昨年度まで,低線量・高線量率X線照射(約1.2Gy/m,総線量0.5Gy)と強制水泳試験(FST)後に,アルコール投与により肝臓に酸化ストレスを負荷した場合の肝障害の程度について検討した。そこで今年度は,FSTに伴い誘導される諸臓器中の酸化ストレスに対する低線量・高線量率X線照射による作用について検討した。すなわち,マウスに疑似(Sham)照射,0.1 Gy・0.5 Gy照射を行い,その後,FST(10分/日,計5日)を施した。最後のFSTの6時間後に,脳・膵臓・腎臓・肺を摘出し試料に供した。抗酸化機能を分析した結果,1)脳では,superoxide dismutase(SOD)活性はsham照射・FST群が対照群に比べ有意に低く,total glutathione(t-GSH)量は0.5 Gy照射・FST群が0.1 Gy照射・FST群より有意に高かった。2)肺では,catalase(CAT)活性は0.1 Gy照射・FST群が対照群に比べ有意に高かった。3)膵臓では,SOD活性は0.5 Gy照射・FST群が他の群に比べ高く,t-GSH量は0.5 Gy照射・FST群が対照群に比べ有意に高かった。また,CAT活性は0.5 Gy照射・FST群がsham照射・FST群と0.1 Gy照射・FST群より有意に低かった。4)腎臓では,CAT活性はsham照射・FST群,0.1 Gy照射・FST群,0.5Gy照射・FST群が対照群に比べ有意に高かった。以上の所見から,低線量域において,低線量率照射の場合と同様に,概ね高線量率事前照射は抗酸化機能の亢進に差異はあるもののFSTに伴う酸化ストレスを抑制し,これには放射線感受性による臓器依存性があることが示唆できた。
|