昨年度に引き続き改良した沸騰伝熱設備を用いて、プール沸騰熱伝達実験を行った。模擬炉心構造材としてステンレス鋼を溶融して水中で凝固させたフレーク状物質と、対比に用いた直径10 mmのステンレス球は伝熱面上に堆積することで限界熱流束が30%程度低下した。これは気泡の離脱を抑制し、伝熱面を乾燥させやすいことが原因と考えられる。一方で、フレーク状物質とステンレス球に親水性を付与することで、堆積物の高さが高くなるに伴い、限界熱流束は一転して増大し、高さ100 mmの場合に30%程度上昇した。可視観察の結果、複雑構造により気泡の合体が抑制され、界面積濃度が大きくなることから、循環流量が増大し、伝熱面への液供給が増加したことが限界熱流束の増大要因と考えられる。 またピッチの異なる螺旋構造を三次元付加造形し、伝熱面上に設置してプール沸騰熱伝達実験を行った。ピッチが長い場合には限界熱流束を40%程度増大させる効果があるが、ピッチが短くなると限界熱流束の向上効果は20%程度となり、ピッチには最適値が存在する。ピッチが短いと旋回力が強くなることが期待できるが、気泡の離脱を抑制し、旋回構造内に気泡が停滞する様子が観察された。 これまでの成果を基に、ハニカム多孔質プレートと格子構造を組み合わせることで、限界熱流束は約3倍に増大した。付加造形による複雑構造と濡れ性の改善などが限界熱流束を向上させる効果を定量的に把握した。以上の成果は令和5年度加納達也氏の修士論文と2件の論文にまとめた(1件は掲載済み)。
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