研究実績の概要 |
吸着法による海水、中でも高濃度海水からのウラン回収を目的として、当研究グループが見出した、中性付近で6価のウランと特異的かつ選択的に結合する有機リン系化合物抽出剤1,1,3,5,5-pentaphenyl-1,3,5-triphosphapentane trioxide(PPTPT) をポリマーに含浸担持させた各種吸着剤の開発を行っている。通常の含浸型吸着剤では一般的に、使用中に抽出剤が担体から徐々に溶出し、吸着性能が低下することが避けられないことから、近年では溶出抑制に効果的なポリマーの探索に注力している。その一環として、硝酸酸性の高レベル放射性廃液からの核種分離に実績のある、バイオポリマーの一種であるアルギン酸(ALG)を固定化担体として用い、抽出剤をゲルポリマー内に包括固定した抽出剤内包型マイクロカプセル(MC)を調製すると共に、海水ウラン回収用新規吸着剤としての適用可能性について検討した。抽出剤としてはPPTPTの他、種々の候補共内包化合物を用いた。 バッチ法による実験の結果、アルギン酸バリウムゲル(BaALG)にPPTPTのみが内包されたPPTPT-BaALGのPPTPT溶出率80%以上に対し、水に難溶の固体であるジフェニルアミン(DPA)を共内包したPPTPT-DPA-BaALGでは約30%、さらに水溶性でNaやBaと水に不溶な塩を形成するドデシルベンゼンスルホン酸(DBSA) を共内包したPPTPT-DBSA-BaALGでは10%未満まで溶出率が減少した。PPTPTのBaALGへの内包だけでなく、共内包化合物共存による溶出率の大幅減少は、これらがPPTPTの溶出を防ぐ「壁物質」として作用するためであると考えられた。また6価のウランの吸着率もPPTPTの溶出抑制に伴い増大した。今後は共内包化合物の化学構造等の特性と壁効果との関係について、より詳細に検討していく。
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