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2022 年度 実施状況報告書

光誘導ドリフトを利用した放射性セシウムの高効率同位体分離スキームの開発

研究課題

研究課題/領域番号 21K04947
研究機関広島工業大学

研究代表者

松岡 雷士  広島工業大学, 工学部, 准教授 (50455276)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2024-03-31
キーワード原子・分子物理 / 反応・分離工学 / 半導体レーザー / 核変換 / 飽和吸収分光
研究実績の概要

核変換の前処理として必須となる放射性セシウムの同位体分離技術を確立することにより、地層処分における漏洩リスクの回避を目指す。研究代表者のこれまでの研究において「光誘導ドリフト」を利用した分離スキームが機能する可能性が実験的に実証されている。本研究では将来的な放射能分離試験に向けたスキームの信頼性向上を目的とし、新規実験システム開発・物理的機構の解明・補助装置群の開発などを実施する。
令和4年度は前年度から引き続き、セシウム原子D1線(894 nm)を励起するためのレーザーシステム開発中心とし、サブシステムとしての安定な波長標準の開発、および、レーザー光によるセシウム吸収スペクトル計測の解析に関する問題点の検証などを行った。
894nmのレーザー光源としてSacher Lasertechnik社のマイクロンレーザー素子を用いたシステム開発を行った。レーザーとしての運用は可能になったものの、安定したセシウムの励起に使用するレベルには至っておらず、現在でも調整と検証を継続している。波長標準として開発した垂直共振器型面発光レーザー(VCSEL)の波長のDichroic Atomic Vapor Spectroscopy(DAVS)を用いた安定化には成功し、光誘導ドリフト実装時の高安定波長標準として使用できるレベルとなった。また、セシウム原子のレーザー吸収分光において、レーザー強度に依存して解析で求められるスペクトルが変化してしまう問題について、ゼロ点決定の精度の観点から原因を解明することが出来た。昨年度に実施した飽和吸収分光の基礎的な検証と合わせ、光路長の長いターゲットに対するレーザー吸収分光を行う際に発生しうる誤りについて系統的な整理が進んだ。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

4: 遅れている

理由

メインとなる半導体レーザーシステムの開発が遅れており、スペックシートには現れず事前に把握が不可能だった素子の不具合が出てしまっている。温度などのパラメータ最適化でカバーできる範囲なのかはまだ判断が難しいが、小型で比較的扱いやすい素子であることは確かであるため、実用的な運用方法が見つかれば、その後の研究へのメリットは大きい。
レーザーシステムの開発に遅れが出ているため、分離容器の改善には手が回っておらず、これまでの容器をそのまま利用することとなる。
一方で同位体比計測のための長いセル中での分光手法の開発については課題の発見と解決が多数あり、ノウハウの可視化が進んでいる。ここで得られた手法としての知見は、レーザー吸収分光計測に関連する広い範囲への応用が期待できる。

今後の研究の推進方策

(1)894 nm のレーザーを用いたセシウム原子の光誘導ドリフトの観測、および、 (2)同位体比計測のための変調伝搬分光の信号形成機構の解明について、現在までの成果を統合して装置開発・実験を進める。
(1)については開発中のレーザー光源の整備を進め、894 nm でも光誘導ドリフトが観測できることを実験的に実証する。
(2)については変調伝搬分光と飽和吸収分光シグナルを対比させながら計測できるシステムを構築し、変調伝搬分光のシグナル変化の原因を飽和吸収分光のスペクトルをヒントにして解明する。

次年度使用額が生じた理由

「基盤研究(C)」及び「若手研究」における独立基盤形成支援(試行)に採択されているため、基盤整備分の予算を先行して使用した。旅費については別途予算から支援される機会が多く、使用機会が無かった。光学システムの消耗品については若干余剰が出たが、次年度に予定通り使用する。
使用タイミングのずれはあったが、次年度も当初計画の通りに使用を進める。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2022

すべて 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件)

  • [学会発表] セシウム原子の光誘導ドリフトの観測:高効率同位体分離実現への第一歩2022

    • 著者名/発表者名
      松岡 雷士
    • 学会等名
      日本原子力学会 中国・四国支部 2022 年度第 2 回講演会
    • 招待講演

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公開日: 2023-12-25  

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