廃炉から生じる可能性のある成分(ジルコニウム(Zr),セリウム(Ce))などを回収し,無機イオン交換体を合成し,核燃料廃棄物中に多量に生成している放射線性が高く毒性のあるセシウム(Cs),ストロンチウム(Sr),ルテニウム(Ru),コバルト(Co),アンチモン(Sb)などを取り除き,有用な白金族元素を回収することを目的とした。 本年度は,ジルコニウム,セリウムを含むイオン交換体を合成した。XRD分析では,いずれのイオン交換体ともハローパターンが見られたことから不定形であることを確認した。また,ジルコニウムを含む不定形のイオン交換体については,マッフル炉を用いて400℃および960℃で処理を行い,不定形および結晶性のイオン交換体が得られた。これらイオン交換体は,Cs,Sr,Ru,Co,Sbについて塩酸溶液中での吸着特性をバッチ試験で評価した。塩酸濃度が0.3,1.0,3.0,9.0 mol/Lで試験を行ったところ,Cs,Sr,Sb,Ruに対してよく吸着するイオン交換体があった。一方,今回合成したイオン交換体ではCoをよく吸着するものはみられなかった。さらにマッフル炉を用いて固層反応法(メルト法)によりジルコニウムを含むイオン交換体を合成した。 また,昨年度までに合成させた新規無機イオン交換体を多孔性シリカビーズに担持させることに成功した。シリカビーズ担持型の無機イオン交換体を用いることによりカラム分離への応用を可能とした。模擬高レベル廃液を用いてカラム試験により,白金族等との回収試験を行ったところ,モリブドリン酸ジルコニウムを担持させたイオン交換体では,パラジウムを回収することができ,モリブドリン酸タングステンを担持させたイオン交換体を用いてルテニウムが回収できる可能性を見出した。また,アンチモン酸系シリカビーズ担持型イオン交換体では,モリブデンを回収できる可能性を見出している。
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