研究課題/領域番号 |
21K04950
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研究機関 | 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
遠藤 駿典 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 原子力基礎工学研究センター, 研究職 (10851850)
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研究分担者 |
奥平 琢也 名古屋大学, 理学研究科, 助教 (40826129)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 円偏光ガンマ線 / ポラリメータ |
研究実績の概要 |
本研究は中性子捕獲により生じる複合核共鳴状態を表すパラメータの一つである全角運動量を、偏極中性子捕獲反応で生じるガンマ線の円偏光度を測定することにより、決定することを目指している。共鳴からのガンマ線の円偏光度の測定の例はこれまでなく、これは世界で初めての測定となる。 今年度はガンマ線の円偏光度を測定するために製作したガンマ線ポラリメータの性能評価を分子科学研究所シンクロトロン放射光施設UVSORのBL1Uにて行った。BL1Uでは円偏光レーザーを用いたレーザーコンプトン散乱により円偏光ガンマ線ビームが生成できる。この円偏光ガンマ線のポラリメータに対する透過率を測定した。右巻き左巻き円偏光ガンマ線のそれぞれの透過率の差から、ポラリメータの円偏光度に対する感度である偏極分解能を評価した。またポラリメータに流す電流を変えて複数点で測定を行うことにより、磁気ヒステリシスを測定した。合わせてGEANT4を用いたシミュレーション開発にも取り組み、実験結果と一致することを確認した。これによりガンマ線の円偏光度測定のための装置の整備が終了し、J-PARC・MLFでの実施を目指している、中性子捕獲反応で生じるガンマ線の円偏光度測定のための準備が整った。また中性子偏極装置であるHe-3スピンフィルターはHe-3偏極率75%、150時間の緩和時間を実験を行う予定のMLF・BL10にて達成することに成功し、測定対象の一つであるInの共鳴において30%の偏極中性子を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ガンマ線の円偏光度を測定するために製作したガンマ線ポラリメータに関して、円偏光度への感度である偏極分解能の評価をUVSOR BL1Uにて行い、偏極分解能を実験的に求めた。またポラリメータに流す電流を変えて複数点で測定を行うことにより、磁気ヒステリシスを測定した。さらに並行してGEANT4によるシミュレーションにも取り組み、実験結果と一致することを確認した。これによりガンマ線の円偏光度測定のための装置の整備が終了し、J-PARC・MLFでの実施を目指している、中性子捕獲反応で生じるガンマ線の円偏光度測定のための準備を整えることができたため、おおむね順調に進展している。と判断する。
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今後の研究の推進方策 |
2年目はJ-PARC・MLFにて中性子捕獲反応で生じたガンマ線の円偏光度の測定に向けたテストおよび中性子偏極装置の改良を行う。中性子偏極装置としては、ビームライン上でのレーザー照射により、偏極率の減少を目指すOn situ SEOPシステムの構築を目指していたが、1つに長期のビームタイムの確保が難しい点、そして偏極率そのものの改善は必要な測定精度に対し2乗で効くため、短期間での効率の良い測定を目指し、大型セルの開発に取り組むことにした。現在の中性子偏極率は1eVで30%程度であるが、これを50%程度にあげることを目指して開発に取り組む。そして3年目に本測定を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
スピンフィルタ用消耗品の消耗が想定より少なく購入数を減らすことができたこと及び、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響を受けて、学会等のイベントがオンライン形式で開催されたことから、当初計画よりも支出額が少額となり、次年度使用額が生じることとなった。次年度使用額は次年度研究費と合わせてスピンフィルタ用消耗品の購入に係る費用、大型セルの製作に係る費用及び、J-PARCでの実験体系の構築に必要な架台等の物品の購入に係る費用として使用する。
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