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2021 年度 実施状況報告書

自然放射線被ばくの環境変化に対する生体恒常性維持機能の解明

研究課題

研究課題/領域番号 21K04954
研究機関国立研究開発法人日本原子力研究開発機構

研究代表者

神崎 訓枝  国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 核燃料・バックエンド研究開発部門 人形峠環境技術センター, 研究職 (70826510)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2024-03-31
キーワードラドン / 低線量放射線 / メタボローム解析
研究実績の概要

本研究では、天然に存在する放射性希ガスのラドンを吸入した後のマウス臓器中の抗酸化能に注目したメタボローム解析を行い、機械学習によりその変化特性を明らかにする。初年度は、ラドン吸入(濃度:バックグラウンド(約20 Bq/m3)、200 Bq/m3、2000 Bq/m3、20000 Bq/m3、曝露期間:1日間、3日間、10日間)直後のマウス肺のメタボローム解析が実施され、そのデータ解析を行った。抗酸化能に大きく寄与している可能性のある活性イオウ分子種など52種類の代謝物が検出された。例えば、抗酸化物質として有名なグルタチオンG-SHでは、ラドン吸入による有意な変化は見られなかったが、高濃度で短時間の曝露では増加の傾向がみられた。グルタチオンに余分なイオウが結合したG-S-SHでは、バックグラウンドと比較して200 Bq/m3の10日間で有意な増加がみられた。酸化型グルタチオンGS-SGや酸化型グルタチオンに余分なイオウが結合したGS-S-SGでは、ラドン吸入による有意な変化は見られなかった。また、バックグラウンドと比較して、メチオニンは200 Bq/m3の10日間で、システインは2000 Bq/m3の10日間で、有意な増加がみられた。これらの結果は酸化ストレスに関連している可能性を示唆しているが、予想通り低線量放射線被ばくの生体影響は単純な変化ではなく、統計的なデータ解析には限界があることが分かった。次年度以降、網羅的に検出した多数の代謝物を機械学習を用いて総合的に解析していくことで、低線量放射線被ばくによる生体影響の一端を明らかにする。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究では大きく分けて3つの実験(マウスのラドン曝露試験、メタボローム解析、データ解析)が行われる。そのうち、初年度は主にマウスのラドン曝露試験とメタボローム解析が完了し、そのデータ解析に着手できた。順調に次年度の計画が進められる状況にあるため、おおむね順調に進展していると評価した。

今後の研究の推進方策

肺がん因子としても知られるラドンを曝露した後の肺のメタボローム解析が完了したが、予想通り、その被ばく影響は単純なものではなかった。今後、これらのデータを用いて機械学習を用いたデータ解析を行っていく予定である。また、初年度は低コストで実験を進めることができたため、次年度はラドン以外の被ばくデータの取得を新たに計画している。自然放射線被ばくの環境変化に対する生体恒常性維持機能の解明の一環として、被ばくの仕方(放射線の種類、被ばく線量、線量率)による影響を検討していく予定である。

次年度使用額が生じた理由

初年度分の研究費を使用して実施する予定だった実験のうち、一部について、別財源を使用することが可能となり、動物実験、メタボローム解析及びデータ解析に係る支出額が当初計画よりも安価で済んだため、次年度使用額が生じることとなった。次年度使用額は、次年度分研究費と合わせて、次年度に予定している追加実験(ラドン以外の放射線曝露実験)に係る費用として使用し、放射線の種類による差も含めて、より効果的に本研究の目的を達成することを目指す。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2021

すべて 学会発表 (2件)

  • [学会発表] ラドン吸入によるマウス臓器中のイオウ関連代謝物の変化2021

    • 著者名/発表者名
      神﨑訓枝、迫田晃弘、片岡隆浩、田中裕史、山岡聖典
    • 学会等名
      第58回 アイソトープ・放射線研究発表会
  • [学会発表] 機械学習を用いたラドン吸入後のマウス臓器におけるメタボロミクスデータの解析2021

    • 著者名/発表者名
      神﨑訓枝、迫田晃弘、片岡隆浩、山岡聖典
    • 学会等名
      日本放射線影響学会 第64回大会

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公開日: 2022-12-28  

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