研究課題/領域番号 |
21K04955
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研究機関 | 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 |
研究代表者 |
武山 昭憲 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 高崎量子応用研究所 先端機能材料研究部, 主幹研究員 (50370424)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 原子スイッチ / ガンマ線 / 高温 / 極限環境 |
研究実績の概要 |
金属酸化物を基材とした原子スイッチは、導電性の酸素空孔の集合/離散によりオン/オフ動作することから、放射線照射で生成する電荷の影響を受けにくく、高温・高放射線(極限環境)で動作するデバイス(極限半導体デバイス)として期待されている。本研究では、極限環境下で動作可能な原子スイッチの実現を目指し、高温(≧500℃)+放射線(ガンマ線)(≧10MGy、メガグレイ)という極限環境での電気特性の劣化挙動の把握および劣化メカニズム解明を目指す。 今年度は、金属酸化物に酸化チタン(TiO2)を用いた原子スイッチに数百℃(~500℃)で高線量のガンマ線(≧10MGy)を照射し、電気特性の劣化挙動を把握する照射容器の設計・製作に取り組んだ。容器を構成するヒーターや配線などの部材は、温度ムラやガンマ線による劣化ができるだけ抑制されるように選定した。さらに、照射で原子スイッチに生成した結晶欠陥やそこに捕獲された電荷の情報を得るため、これまで使ってきた可視光照射による測定系に加え、赤外光照射で光過渡電流を測定できる光学系を整備した。これにより約0.1eV間隔で欠陥のエネルギー位置と、捕獲された電荷密度の把握を可能にした。原子スイッチの作製に関しては、酸化チタンを基板上に製膜するコーター、および原料溶液と濡れ性が良く、均一に製膜が可能な基板を選定した。 以上により、原子スイッチの室温ガンマ線照射による劣化挙動を、より詳細に把握するための環境が整った。今後は、照射容器と測定系を組み合わせ、原子スイッチの劣化挙動の「その場」測定についても検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
新型コロナ感染拡大による緊急事態宣言の発令により、目標線量である10MGyまで照射施設を連続して利用することが困難であった。同時に、テレワークの推奨により原子スイッチの作製や劣化挙動を把握する装置の開発が大幅に滞った。さらに照射容器に関しては世界的な半導体や資材不足により、当初予定していた構成部材の調達に時間がかかることが判明し、度重なる設計変更を迫られた結果、極限環境照射の実施まで至らなかった。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き世界的な新型コロナ感染拡大と半導体・資材不足が見込まれるため、設計した照射容器の各部材を最適な納期・価格のものに変更し、速やかに完成させる。これと並行して、室温で原子スイッチにガンマ線を10MGyまで照射し、今年度開発した装置により劣化挙動を把握することで、極限環境(高温+放射線)での劣化挙動把握に向け比較データを取得する。
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次年度使用額が生じた理由 |
高温ガンマ線照射容器の作製に関しては世界的な半導体や資材不足により、当初予定していた構成部材の調達に時間がかかることが判明し、度重なる設計変更を迫られた結果、完成させることが出来なかった。また新型コロナ感染拡大により、発表・参加予定だった学会が軒並みオンライン開催となった。次年度は照射容器の完成と、オンライン開催を生かし各種学会で積極的な成果発信を行う。
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