研究課題/領域番号 |
21K04956
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
浅井 志保 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 計量標準総合センター, 主任研究員 (10370339)
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研究分担者 |
堀田 拓摩 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 福島研究開発部門 福島研究開発拠点 大熊分析・研究センター, 技術・技能職 (20767678)
昆 慶明 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質調査総合センター, 主任研究員 (80709634)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | レーザーアブレーション / ICP-MS / トリプル四重極 / Sr-90 / 同位体希釈質量分析法 |
研究実績の概要 |
福島第一原子力発電所(1F)の汚染水処理に使用された吸着材等を安全に処分するには、吸着された放射性核種の量を把握する必要がある。Sr-90は、Cs-137と並んで評価の重要度が高い核種であるが、Sr-90を分析する際は、溶液状態で化学分離し干渉成分を除去する操作が不可欠で、高線量のため溶液化できない廃吸着材中Sr-90は分析困難である。本課題ではレーザーアブレーション(LA)-トリプル四重極(TQ)-誘導結合プラズマ質量分析計(ICP-MS)の『固体試料導入機能』と『装置内干渉除去機能』を利用し、同位体希釈質量分析法(IDMS)の原理に基づき含Sr-86標準固体(顆粒体)を少量の試料に “混ぜるだけ”でSr-90を測定できるようにする新しい分析法の提案を目指す。2022年度は、Sr吸着材(顆粒体)の模擬試料を用いて、LA-ICP-MSの測定条件を検討した。模擬試料は、陽イオン交換樹脂(MCI GEL CA08P、平均粒径120 μm)および 抽出試薬担持樹脂(Ln Resin、粒径20-50 μm)を用いて作成した。陽イオン交換樹脂にはストロンチウムイオンはほぼ100%吸着したが、樹脂構造が固く、レーザー照射によってアブレーション中に構造が破壊されるため、安定したシグナルが得られなかった。Ln Resin(ストロンチウムの代わりにネオジムを吸着)のようにすり潰せる吸着材では、試料表面を平滑にできるため、スパイクピークなしの安定したシグナルが得られ、それらから算出した同位体比は参照値に一致した。このとき、レーザーのスポット径を最大に近い100 μm、フルエンスおよびパルス繰り返しは小さく設定(1.7 J/cm2, 1 Hz)した。照射エリアの樹脂をほぼ全てエアロゾル化することで、安定して効率よくICP-MSへ導入されたといえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度は、IDMSによる定量値算出で重要な要素となる「不確かさの計算方法」についての議論を中心に進めた。研究実績の概要では記載しなかったが、同位体の計数率のばらつきと定量値の不確かさの関係を評価することで、適切な測定精度の目安が得られた。しかしながら、LA-ICP-MSを用いた試験時間を十分に確保できなかったことから、「やや遅れている」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題では、Sr-90除去に使用される吸着材を試料として想定し、Sr濃縮同位体を吸着材中に含侵することで「含Sr同位体標準固体」を調製する。これまでの検討結果から、含Sr-86標準固体中Sr-86原子数(添加重量から算出)、「試料」と「Sr-86標準混合試料」のSr-86/ Sr-90測定値から試料中Sr-90原子数を算出できると予想している。この原理の実証にあたり、燃焼計算コードによる吸着材中のSr同位体存在度の範囲の推定値を参考とし、模擬吸着材試料を調製してIDMSの適用性を評価する。まず、Srイオンに対する選択性が高い抽出クロマトグラフィー樹脂を用いてIDMS評価用の模擬固体を作成し検出限界や定量精度の目安を得る。そして溶液測定の結果と比較し技術的妥当性を検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
輸入品の値上がりのため、これまでに実施した予備検討では可能な限り代替品を活用し、今後実施する本試験に必要な試薬や物品費の購入費とするよう計画を変更した。また2022年度は、全てオンラインでの学会参加となったため出張費用が不要となったが、2023年度は、国際会議での発表を予定しており、繰越分を使用することとした。
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