研究課題/領域番号 |
21K04959
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
阿部 一徳 秋田大学, 国際資源学研究科, 助教 (50746782)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 石油増進回収法 / シリカナノ粒子 / 濡れ性 / マイクロ流路モデル / 流体挙動 |
研究実績の概要 |
シリカナノ粒子を用いた石油増進回収法の濡れ性改質プロセスを評価するため、粒径の異なるアニオン性シリカナノ粒子(一次粒子径:約5nm、60nm)を用いて流体挙動を評価した。石灰岩コアを用いて、模擬貯留岩の水相にはNaCl水溶液(40,000ppm)、油相には重質原油または軽質原油を用いることで、初期濡れ性を油濡れ~中間濡れに調整した。まずシリカナノ粒子による油置換効果を確認するためにAmott試験および接触角測定を実施し、いずれの初期濡れ性の条件下でも強い水濡れ性への改質効果が認められた。ナノ粒子による濡れ性改質は、ナノ粒子がブラウン運動をしながら油-水-岩石間に侵入し、ナノ粒子の岩石表面への吸着、または分離圧により油が岩石から剥離することで生じる。今回既往研究を参考に、ナノ粒子濃度および粒子径等を変数とし分離圧を計算した。ナノ粒子濃度(1,000~10,000ppm)の増加と粒子径の減少に伴い分離圧が上昇し、Amott測定による濡れ性改質効果との相関も一部確認された。しかし、ナノ粒子水中の初期濃度との強い相関は認められず、今後は実際に油-水-岩石間に侵入した局所的な体積濃度を明確に評価する必要がある。 また、シリカナノ粒子の岩石表面への吸着量や位置を、DLVO理論による全相互作用や電子顕微鏡による孔隙閉塞観察、X線光電子分光法による岩石表面における化学結合状態の評価等から確認した。一方で、分離圧や吸着が生じるプロセスは未だ不明瞭であり、濡れ性改質プロセスの解明に向けては油層内におけるナノ粒子や油水の更なる挙動解析が必要となる。最後に、石灰岩では、塩水圧入時に溶解反応が生じることから、水相中の高pHシフトや2価カチオン等の共存イオンの存在により、シリカナノ粒子の圧入性や岩石表面の吸着性への影響が想定されたが、ナノ粒子の吸着や凝集等による著しい孔隙閉塞は確認されていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度は主に石灰岩コアを用いた特殊コア試験ならびにマイクロ流路モデル実験を計画し、当初の予定通りに進捗している。模擬貯留岩の初期濡れ性を油濡れ~中間濡れ性に調整し、シリカナノ粒子による濡れ性改質効果として油-水-岩石間に働く分離圧を、既往研究を参考にオルンシュタイン・ゼルニケ方程式を解くことで、Amott試験等のような従来の濡れ性改質効果との相関も一部確認された。濡れ性改質プロセスの解明に向けては、マイクロ流路モデルを用いた流体挙動可視化技術による、ナノ粒子圧入時の油剥離速度や油-水-岩石間に侵入した局所的なナノ粒子濃度の評価が課題となる。油層内でのシリカナノ粒子の輸送性についても、ナノ粒子のゼータ電位が低くなる条件下において、掃攻試験時の排出液中シリカ濃度の経時的測定や電子顕微鏡による孔隙閉塞観察、DLVO理論に基づく粒子間の全相互作用の計算結果等から評価できている。
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今後の研究の推進方策 |
砂岩及び炭酸塩岩コアを用いて、濡れ性評価及び掃攻試験を実施し、シリカナノ粒子による増油機構について検討する。増油機構については、シリカナノ粒子による濡れ性改質プロセスに焦点をあて、シリカナノ粒子が原油・岩石間に侵入することで生じる分離圧についても、油層条件を想定し計算するため、マイクロ流路モデル実験及び流体挙動の画像解析から、シリカナノ粒子を多孔質媒体に圧入した時の原油の挙動解析を行う。また原油剥離の経時変化を顕微鏡により観察することで、シリカナノ粒子による濡れ性改質プロセスの理解を深める。
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