研究実績の概要 |
シリカナノ粒子を用いた石油増進回収法の濡れ性改質プロセスを評価するため、マイクロ流路モデルを用いてシリカナノ粒子圧入時の流体挙動を評価した。マイクロ流路モデルは砂岩貯留岩を模した孔隙モデルを採用し、孔隙の表面濡れ性が親水性と疎水性の2種類を用いた。前年度までの結果から、石油増進回収に有効な圧入塩水中のシリカ含有濃度1,000~5,000ppmに調整し、軽質原油で飽和した各マイクロ流路モデル内で流体挙動評価を行った。マイクロ流路モデル表面の初期濡れ性の違いにより、ナノ粒子含有塩水圧入時の油排出挙動や残留油分布に影響があることが観察され、油排出挙動については比較的高い浸透率(100~500ミリダルシー)を有する岩石コア(砂岩、石灰岩)での掃攻試験やAmott測定による濡れ性評価試験結果との相関が一部確認された。なお、本研究で用いた軽質原油では、シリカナノ粒子による油水間の界面張力低下は確認されず、油回収率増加への影響は生じないことが示されている。それゆえ、シリカナノ粒子による増油機構としては孔隙表面の濡れ性が強い水濡れ性にシフトしたことが主要因であり、ナノ粒子が油-水-岩石間に侵入したことによる岩石表面への吸着層形成および分離圧の上昇による油剥離の影響によるものであることが考察された。一方で、数値シミュレーションモデル構築や高精度化による広域流動評価に向けては、シリカナノ粒子の固液界面でのより詳細な吸脱着挙動解析や相対浸透率の計算が求められており、本成果に基づき、機械学習を用いた相対浸透率曲線の推定や、貯留岩から成形した岩石薄片サンプルでの流動実験による流体挙動直接観察システムの構築を進めている。
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