送配電ケーブルの許容電流は、導体温度の上限値に基づき定められており、導体温度変化には熱的慣性があることから、急峻な電流変化に対して時間遅れを伴って変化する特徴がある。また、架空送電線・ケーブルの場合、周囲の気象条件により大きな影響を受けることから、特に風速・風向の影響を適切に考慮した導体温度評価が求められる。 本研究では、低圧配電線に着目し、絶縁電線の導体温度を推定するための熱等価回路モデルを構築し、数値シミュレーションにより等価回路中の熱抵抗の妥当性を評価するとともに、実際のケーブルを用いた通電実験ではステップ電流変化に対するケーブル表面温度の過渡応答を測定し、熱容量を含めた等価回路モデル全体の妥当性を検証した。等価回路モデルの応用例として、従来の常時許容電流値を送電容量制約として用いた場合と比べて、導体温度に上限制約を課した場合、太陽光発電出力を想定した通電電流の抑制量がどの程度変化するかを定量的に明らかにした。また、高圧配電線として用いられている絶縁電線を対象として、熱等価回路モデルを構築し、妥当性を検証した。電動車両等への充電電流を想定し、ステップ上に電流が変化した場合の熱時定数を評価するとともに、太陽光発電の出力変動を想定した場合の出力抑制量を評価した。 さらに、架空送電線(鋼芯アルミより線)の場合、対流による冷却効果が大きな影響を与えることから、送電線温度を評価する有限要素解析(FEM)モデルを開発し、風洞実験による電線温度データと比較した。その結果、低風速時(0.5m/sおよび2.0m/s)の定常状態において、比較的良好に一致する結果となり、従来法(CIGREモデル)に比べて精度良く風洞実験結果を再現可能であることを示した。
|