本研究の最終目標は、工場の煙突や地下道路の換気塔などの排気用タワーに用いられる強制排気用のファンの消費電力を、野外の風力を用いて大幅に省エネするために、「小さくて高効率」、かつ「風向に影響を受けない」創風構造体の形状を「発見」し「実証」することであった。 風洞実験では、まず効果的なタワー出口形状の発見のために、タワー鉛直方向に切込み形状をもつタワーモデルを用いてパラメトリックスタディを行い、切込みの外側にガイド板を設置することで、風向に依存せずに高い創風性能を維持できることを発見した。次に、タワー内に排気用のファンを設置して消費電力を測定し、タワーに横から風をあてた場合には実際に省エネ効果があることを実証した。 数値シミュレーションでは、風洞実験モデルが風向に依存せずに性能を発揮したメカニズムを検証した。ガイド板がない場合は切込みからタワーに流入した風が内圧を上昇させ、上昇風の生成を阻害するのに対し、ガイド板を設置したタワーは風の流入を防ぎつつタワー側面、及び内部に低圧領域を生成し、効果的に創風していることを明らかにした。 理論解析では、つば付きディフューザ風車の簡易理論を構築し、さらに翼素運動量理論を用いて排気ファン消費電力を定式化することで、その削減量を予測・評価した.その結果、タワー内風速が6m/s程度までの場合、タワー出口形状や野外の風速が省エネ性能に大きく影響すること、より高い風速ではディフューザが大きな効果を発揮することが示された。そこで、高アスペクト比のディフューザモデルを製作して風洞実験を追試し、圧力回復係数0.8以上という高い性能を確認し、その有用性を実証した。 野外実験では12m高さのソーラータワーを用いて野外風の創風効果を検証したが、タワー高さの不足と、広い集熱部吸気口の影響により、風洞実験よりは低い創風性能を示す結果となった。
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