研究課題/領域番号 |
21K04968
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
涌井 徹也 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40339750)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 最適化 / 分解法 / 低炭素化 / エネルギーネットワーク / 再生可能エネルギー / エネルギー貯蔵 |
研究実績の概要 |
低炭素エネルギーネットワークの大規模設計問題に対して,変数と制約に基づく分解法を多段階で導入した最適化手法を構築する第1段階として,今年度は,低炭素エネルギーネットワークの運用問題に着目し,熱融通を考慮した運用問題に対する空間分解手法と長期間エネルギー貯蔵を考慮した運用問題に対する時間分解手法を構築した. まず,需要家間での熱融通を考慮したエネルギーネットワークの運用問題(混合整数線形計画問題)に対してDantzig-Wolfe分解理論に基づく空間分解手法を構築した.エネルギーネットワークに接続する需要家数が増えると,計画区間を1日とした場合でも運用問題の規模が大きくなる.そこで,融通する電力や熱の収支式を需要家を接続する結合制約と見なし,この制約を満たしながらエネルギーネットワークの運転コストを最小化する主問題と各需要家の運用計画を最適化する副問題とに分解した.熱融通制約は送・受熱側の需要家間で個別に考慮し,任意の需要家間で融通制約を取り扱える汎用的な分解手法を構築した.列生成法に基づく分解問題のヒューリスティック解法をマルチスレッドワークステーションに実装し,商用最適化ソルバーで原問題を直接解く場合に比べて,最適性ギャップの小さな準最適解をより短い計算時間で探索できることを明らかにした. また,再生可能エネルギー電源の余剰電力により水素製造を行い,これを季節間貯蔵するエネルギー貯蔵・供給システムの年間運用問題のための時間分解手法も構築した.一年間を複数の計画区間に分割し,隣接サンプリング時刻間での機器の運転状態やエネルギー貯蔵量の変化制約を結合制約と見なすことで,空間分解と同様の手法を適用することが可能となり,商用最適化ソルバーでは制約条件を満たす実行可能解を見つけることが不可能な大規模運用問題においても,最適性ギャップの小さな準最適解を探索できることを明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度の到達目標であった,熱融通を考慮した運用問題に対する空間分解手法と長期間エネルギー貯蔵を考慮した運用問題に対する時間分解手法の構築が計画通り行えている.
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今後の研究の推進方策 |
エネルギーネットワークに接続する需要家数が多くなると,電力や熱の融通による運転コスト削減効果ならびに再生可能エネルギーの有効利用度は向上する.また,水素貯蔵による再生可能エネルギーの有効利用度の向上を図るためには,長期間(例えば,一年間)の運用計画を合理的に立案することが求められる.よって,低炭素エネルギーネットワークの運用計画問題は空間的(接続する需要家数)にも,時間的(考慮する計画区間サンプリング数)にも大規模になることが特徴である.そこで2022年度は,低炭素エネルギーネットワークの大規模運用計画問題を原問題と位置付けて混合整数線形計画法に基づいて定式化し,商用最適化ソルバーの求解性能を分析する.その上で,構築した時間分解手法と空間分解手法を階層的に組み合わせた二段階時・空間分解手法を構築し,分解問題に対して最適性ギャップの小さな準最適解を探索可能なヒューリスティック解法の開発を行う. さらに,研究対象を低炭素エネルギーネットワークの最適設計問題にも拡張し,低炭素エネルギーネットワークの最適設計問題を設計問題と設計変数を固定した運用問題とに変数分解する手法を構築する.低炭素エネルギーネットワークの導入効果は経済性,省エネルギー性,環境性(CO2排出量),再生可能エネルギー電源の有効利用度など多岐に渡ること,また,設計計画時には,二段階時・空間分解に基づく運用計画の立案と組み合わせる必要があることから,設計変数の探索に多目的進化アルゴリズムの導入を検討する.
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