研究実績の概要 |
2021年度に開発したMIMO型ボアホールレーダを、(実験1)大学構内実験場および(実験2)鉱山中の実験場で性能評価を行った。本レーダでは、ダイポール素子(D)とループ素子(L)を送受信アンテナにもつアレーアンテナである。これらアンテナの種類により、4通り(D-D, D-L, L-D, L-L)の送受信アンテナの測定ができる。(実験1)では、土壌中にある導体円柱を測定対象として性能評価を実施した。本年度にアンテナを挿入する坑井に対し直交する坑井を新たに掘削した。これにより、鉛直導体円柱、水平導体円柱及び45度傾斜導体円柱の3種類を目標物体としたレーダ計測が実施可能となった。MIMO型ボアホールレーダで実験を行ったところ、鉛直導体円柱では、D-Dの組合せに対し、D-L, L-D 及び L-L は 15 dB以上受信パワーが低かった。水平導体円柱ではD-DとL-L は同程度の受信パワーであったが、これらより D-L 及びL-D が 11 dB 程度受信パワーが低かった。斜め導体円柱では、D-D に対し、D-LとL-D は8 dB 程度低く、さらに 5 dB 程度低くL-Lが受信された。このように送受信の組合せにより受信電圧に差がみられ、これらは物体の形状に関する情報をもっていると考えられる。(実験2)として、日本国内鉱山で、硬い岩石(スカルン)中に掘削された坑井へMIMO型ボアホールレーダを挿入し、坑井付近にある断層の計測を行った。MIMO型ボアホールレーダには、ループアンテナをアレー配置した。測定の結果、断層からの反射波がアレー素子間で時間差をもって測定され、これから反射波の到来方向を推定した。この推定された方向は断層が実際に存在する方向と調和的であることが確認された。本計測においても、4通り(D-D, D-L, L-D, L-L)の送受信アンテナの測定を実施し、断層や鉱脈ごとに異なる受信特性が得られた。これは、物体の幾何学的な形状を反映していると考えられる。
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