研究課題/領域番号 |
21K04974
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
鈴木 机倫 北海道大学, 化学反応創成研究拠点, 特任准教授 (70793404)
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研究分担者 |
宇田川 太郎 岐阜大学, 工学部, 助教 (70509356)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 原子核の量子効果 / 酵素反応 / 反応経路自動探索 / 量子古典混合法 |
研究実績の概要 |
様々な生命現象の発現機構を解明するために、酵素反応の高い基質特異性の起源を理論的に原子・分子レベルで理解することが重要である。従来の理論手法を酵素反応へ適用することによって、多段階で進行する反応を断片的に解析することが可能である。しかしながら、多段階で複雑に進行する反応経路上の「いつ」、「どの段階で」高い基質特異性の起源が現れるのかを解析することは難しい。これに回答するためには、複雑な酵素反応サイクルをシームレスにかつ精度よく扱える酵素反応解析手法を開発することが不可欠である。そこで本課題では、(1)安定な基質結合箇所探索手法の開発、(2)酵素反応を精度よく扱える酵素反応解析手法の開発および(3)応用計算を実施し基質特異性の起源を解明することを目的する。 R3年度は、研究項目(1)と(2)を実施した。(1)は安定な基質結合箇所探索手法を開発し探索条件を最適化することによって370残基からなる酵素中の結合箇所の探索が可能となった。開発した手法は、P450野生型酵素と変異酵素の基質結合安定箇所の予備探索を実施しており初期条件の検討を開始した。(2)は原子核の量子効果を考慮可能な多成分分子軌道法と反応経路自動探索手法プログラムのインターフェースを開発した。開発したプログラムは、ノード内およびノード間並列に対応しているため効率よく反応経路探索が可能となった。本年度は、酵素反応への応用前に十数分子系を用いたテスト計算を実施し反応経路自動探索が適用可能であることが確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
R3年度は、(1)安定な基質結合箇所探索手法を開発した。また、探索条件を最適化し当初の予定通り、野生型酵素と変異酵素の基質結合安定箇所の探索へ適用しており順調に遂行することができた。(2)は原子核の量子効果を考慮できる多成分分子軌道法と反応経路自動探索手法プログラムのインターフェースを当初の予定よりも早く開発できた。また、酵素反応の前に十数分子系を用いた計算を実施しインターフェースの計算効率の最適化も実施できた。 以上の進捗状況より、全体として概ね研究は順調に進行していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
R4年度は、申請時の計画どおり、(1)で開発した手法を(3)応用計算を実施し基質特異性の起源を明らかにするために野生型と変異体酵素の基質の安定な結合箇所探索とそこへ至る経路解析へ応用する。また、原子核の量子性を考慮した酵素反応経路自動探索も並行して実施する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
配分金額の変更に伴い、当該年度に計算機クラスターの購入に充てられる金額にも変更が生じ、購入機器の調整を行ったため。申請時に予定していなかった国内外の学会に参加する予定であるため、その旅費として使用する予定である。
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