研究課題/領域番号 |
21K04976
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
浜崎 亜富 信州大学, 学術研究院理学系, 准教授 (60510120)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | PNIPAゲル / エキシマー発光 / ゲル内の溶解度 / エネルギー移動 / 相分離クロミズム |
研究実績の概要 |
近年,申請者はピレンなどの疎水的な蛍光性分子を,感温性体積相転移ゲルとして知られるPNIPAゲル(親水性の高分子ゲル)内に閉じ込めて吸脱水を行うだけで,発光波長を俊敏かつ可逆的に切り替わることができる新しいクロミズム(相分離クロミズム)を発見した。ゲルは種類によって多様な機能性を示し,蛍光分子は豊富な選択性があるので,双方を任意に組み合わせれば,これまでの光や電気で誘起される既存のクロミズムを多様で多彩なクロミズムを実現できる。この新しいクロミズムの鍵になるのはエキシマー発光であり,これまで報告例のない分子でのエキシマー発光が,ゲル内では簡単に起こることを立て続けに発見したが,なぜゲル内でエキシマーを形成しやすいのかは明らかではなかった。 本課題では,「1.励起状態の物性解明」,「2.発光体の量子収率測定と最適化」,「3.なぜゲル内では相分離が可能になるのか?」「4.複数分子を同時にキャプチャーできるか」の4つの観点から,相分離クロミズムについて明らかにする計画であり,令和3年度には,1,3,4について検討を行った。1に関して,ゲル中では分子が束縛されるため,均一系溶媒中と比べて全体的にやや寿命が長くなり,モノマーよりエキシマーの方が長寿命となることを明らかにした。3は,ゲル内で水分量が著しく変化するので,蛍光物質のゲル内での溶解度が変わることが原因であった。4については,エネルギー移動が知られる分子の組合せ(例えばアントラセン〔ドナー〕とテトラセン〔アクセプター〕)では,アクセプターを少量添加すると,発光波長が大きくシフトした。そして,ドナーの発光強度とアクセプターの発光強度比が温度変調で大きく変わった。これにより,クロミズムのバリエーションをさらに拡大できる見込みとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本課題では令和3年度(初年度)に時間分解蛍光測定装置と発光量子収率測定装置を構築し,実験に用いる予定である。これらを準備している段階で,令和4年度以降に計画していた課題についても着手した。その結果,量子収率測定以外の課題については,概ね満足のいく結果を得ることができている。
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今後の研究の推進方策 |
本課題の試料に特化した発光量子収率測定装置は令和3年度から進めていて,令和4年度の早い段階でこれを完成させられる見込みである。これまで見出してきた物質群の発光量子収率を評価することにより,発光デバイスとしてのポテンシャルを評価する。その結果は,今後のデバイスへの応用を踏まえた性能向上の足掛かりにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
消耗品の購入が,想定よりも若干少なく済んだため。
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