研究課題
近年,申請者はピレンなどの疎水的な蛍光性分子を,感温性体積相転移ゲルとして知られるPNIPAゲル(親水性の高分子ゲル)内に閉じ込めて吸脱水を行うだけで,発光波長を俊敏かつ可逆的に切り替わることができる新しいクロミズム(相分離クロミズム)を発見した。ゲルは種類によって多様な機能性を示し,蛍光分子は豊富な選択性があるので,双方を任意に組み合わせれば,これまでの光や電気で誘起される既存のクロミズムを多様で多彩なクロミズムを実現できる。この新しいクロミズムの鍵になるのはエキシマー発光であり,これまで報告例のない分子でのエキシマー発光が,ゲル内では簡単に起こることを立て続けに発見したが,なぜゲル内でエキシマーを形成しやすいのかは明らかではなかった。本課題では,「1.励起状態の物性解明」,「2.発光体の量子収率測定と最適化」,「3.なぜゲル内では相分離が可能になるのか?」「4.複数分子を同時にキャプチャーできるか」の4つの観点から,相分離クロミズムについて明らかにする計画であった。1について,励起状態は分子間相互作用が起こるような,かなり近い位置に複数分子が存在していることがわかった。2についても測定装置は完成し,測定を試みた。しかし,ゲル内の蛍光分子の濃度が低く,得られるデータの再現性が疑わしいため,現在も精度の確保に努めている。3については,ゲル内の水の有無による蛍光分子の状態の違いをギブスエネルギーで説明した。4については,エネルギー移動および電荷移動が起こる分子の組合せを複数試し,それぞれエネルギー移動効率と電荷移動効率が膨潤及び収縮状態で変わり,ゆえに色調変化を起こすことを実証した。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (10件)
Journal of Photochemistry and Photobiology A: Chemistry
巻: 443 ページ: 114817~114817
10.1016/j.jphotochem.2023.114817