研究課題/領域番号 |
21K04981
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
立川 雄也 九州大学, 工学研究院, 助教 (70587857)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | プロトン伝導性固体酸化物 / 表面化学 / 電気化学 |
研究実績の概要 |
本研究は、高温でのイオン伝導性を有する固体酸化物材料のうち特にプロトン伝導性を有する材料の表面特性を明らかにするため、電気化学インピーダンス法の緩和時間分布に着目した計測手法によって、電気化学セルの作動特性評価を最終的に明らかにすることを目的としている。そこで1年目では従来材料との電気化学特性の違いを明らかにすること、他の電極材料を用いた試験による特性の変化を明らかにすることを目指して研究を行なってきた。電気化学特性の違いについては、既知の材料を用いた燃料電池での特性評価を行なった結果、従来よりプロトン伝導性酸化物を用いたセル(proton conducting solid oxide cell, p-SOC)の課題であった電解質由来の性能低下を一定程度克服し、前述の電気化学インピーダンス法の緩和時間分布に着目した計測手法によって特性の比較を行なっているところである。今後、燃料電池の逆作動である電解運転での特性も取得に向けて検討している。 また、もう一方の実施内容である他の電極材料を用いた試験による特性の変化について、研究代表者が協力しているグループから本研究とは別の材料系で興味深い成果が報告されており、そちらの報告を考慮して電極材料の選定から改めて進めている。また、電極材料が電気化学インピーダンス法による計測により得られた測定結果に与える影響についても現在、従来の酸素イオン伝導性酸化物材料での評価結果をベースとした成果の取りまとめに向けて進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1年目では従来材料とプロトン伝導性酸化物材料を用いたセルの電気化学特性の違いを明らかにすること、および他の電極材料を用いた試験による特性の変化を明らかにすることを目指して研究を行なってきた。その中で1つ目の実施項目であるプロトン伝導性酸化物材料を用いたセルでの燃料電池運転での特性が1年目の間に順調に得られた点は本研究を進める上での安心材料である。一方、上記材料の電解運転での評価が未実施であるため、研究の加速が必要である。また、2つ目の実施項目である他の電極材料を用いた試験による特性の変化の評価では、昨年度に協力グループで得られた成果などを考慮し当初の想定材料を選定し直し評価を開始する予定であり、2つ目の項目の進捗はやや遅れていると考えられ、加速に向けた対応を進めている。なお上記2つの実施項目を進める上での計測・評価方法の確立については成果の取りまとめに向けて現在進んでいるため、上記2実施項目の研究加速にプラスであると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
プロトン伝導性酸化物を用いたセル(p-SOC)の燃料極における表面特性の電気化学特性への影響を明らかにすることを目指し、p-SOCの評価体制を維持しつつ、現在の問題解決上の課題を克服すべく進めていく。 一方、2年目の研究推進に向けて、研究グループの人員入れ替え発生に伴う遅延を防ぐため、新規に学生アルバイトによる研究遅延抑止・および研究加速を計画している。また、2年目以降用いる特殊な炉のメンテナンスが必要であることが確認できたため、業者に依頼して2年目の早い段階でメンテナンスを実施する予定である。このメンテナンスに伴い、メンテナンス終了まで研究が進捗しない状況を回避するため、実施計画を一部組み替えて研究を継続して実施する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品費についてはほぼ計画通り材料の購入や計測装置関連部品の購入などに充てたため、予定金額どおりであった。しかし、次年度使用額が生じた主な理由である、その他の項目に挙げていた計測装置・評価装置利用料の利用がなかった点については、装置を管理するグループとの調整の結果、費用負担のない形での利用が1年目は可能となったことが要因である(ただし2年目以降が費用が発生)。そのため、この計上した予算については研究の加速に利用する予定であり、主な使い道については、2年目に行う特殊炉のメンテナンス、および人員入れ替えに伴う研究遅延抑止・研究加速を目的とした人件費・謝金として活用したいと考えている。また、旅費については、1年目の国内学会はスキップし、2年目の国際学会での発表に予算を振り分けたいと考え1年目の予算を2年目の学会発表旅費に利用する予定である。
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