研究課題/領域番号 |
21K04983
|
研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
北 幸海 横浜市立大学, 理学部, 准教授 (40453047)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 陽電子 / 陽電子親和力 / 量子モンテカルロ法 |
研究実績の概要 |
申請者はこれまでに、陽電子吸着分子に対する世界最高精度の第一原理法と分光学的精度を有する振動状態理論を独自に開発し、十数年来の謎とされてきた無極性分子への陽電子吸着機構や、陽電子吸着に対するH/D同位体効果の発現機構の解明に成功してきた。本研究では、これらの理論手法をさらに発展・高度化させ、高精度理論計算に基づいた“計算”陽電子分光法を確立することで、これまで起源が不明だった多原子分子への陽電子吸着状態の発現機構を世界に先駆けて明らかにすることを目的に研究を行なっている。R3年度は申請時の研究計画に基づき、以下に記す研究項目(1A)および (1B)を実施した。 (1A) 陽電子励起状態における陽電子吸着能の精密解析法の確立 陽電子励起状態を含めた多原子分子への陽電子吸着機構を詳細に議論するためには、陽電子励起状態を実験分解能で解析可能な多成分系分子理論を確立することである。そこで本研究では、励起状態に対しても基底状態と同等の計算精度を実現できるReptation Monte Carlo法を用いることで、陽電子吸着能に対して実験分解能を達成し得る理論手法の開発・実装を行っている(R4年度も継続)。 (1B) 多成分系多配置理論による量子モンテカルロ法の高度化 陽電子励起状態を考慮して陽電子分光スペクトルを非経験的に解析するには、実験分解能の有する高精度第一原理法のみならず、様々な状態が干渉し合った準位の中から、陽電子の吸着描像を与える準位を効率よく特定可能な解析手法が必要である。そこで本研究では、申請者らが開発した陽電子吸着に対して世界最高精度を有する第一原理法を高度化することで、明確な吸着描像を持った陽電子励起状態を抽出可能な方法を開発している(R4年度も継続)。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
R3年度は申請時に記した研究計画通り、(1A) 陽電子励起状態における陽電子吸着能の精密解析法の確立、および(1B) 多成分系多配置理論による量子モンテカルロ法の高度化を実施した。当初案通り、両課題ともR4年度も継続課題としているが、現時点で概ね想定内の研究結果が得られていることから、自己評価として「おおむね順調に進展している」と判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
R4年度は申請時の研究計画の通り、R4年度からの継続課題である(1A) 陽電子励起状態における陽電子吸着能の精密解析法の確立、および(1B) 多成分系多配置理論による量子モンテカルロ法の高度化を引き続き実施する。また、これから開発手法を用いて、(2A) 陽電子励起状態を含めた陽電子吸着に関する網羅的解析にも着手する。これは様々な分子群に対する系統的解析を実施することで、基礎的データを広く収集することが目的である。また、この段階で得られた結果を研究項目(1A), (1B)へフィードバックすることで、信頼性と精度を損なうことなく理論手法の洗錬化を図る予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
深刻な半導体不足に影響により導入予定だったファイルサーバーの当該年度内に購入ができなかったため、および参加予定だった国内・国際会議が全て延期またはオンライン開催となったために差額が生じた。早急にファイルサーバーの導入を進めるとともに、生じた差額はバックアップ用ディスク・消耗品の購入、およびデータ解析用の端末購入費用に充てる予定である。
|