本年度は前年度に顕著となった低い信号雑音比(SNR)の改善を目指して構築した中赤外線励起位相差顕微鏡を用いてサンプル計測を実施した。PBS培地に散布したポリスチレンビーズを計測サンプルとし、中赤外線照射時と未照射時における取得画像を取得した。取得後の2種類の画像の差を算出することで中赤外線の吸収によって発生した位相のズレ(=屈折率分布)を画像化することができる。 今回は中赤外線光源としてQCLを使用して2900/cm付近の吸収ピークを励起した場合と中赤外線照射をオフにした場合の2種類の画像を構築した位相差顕微鏡で取得した。取得した2種類の画像の差分を算出すると、ビーズの形状がクリアに出現した。中赤外線の波長をピークからずらして照射し、同様の操作を行ったところ、得られた画像に出現するピーズの像は明らかにビジビリティが低下した。これらの事実から、分子の中赤外線吸収をイメージングが簡易な位相差顕微鏡構成によって得られる事を実証した。 研究期間全体を通じて、電子制御波長可変中赤外線レーザー光源の広帯域化を実施し、当初は約2.2~2.7umまでの利用に限定されていた発振波長域を、レーザー共振機内差周波発生(DFG)を適用する ことによって、中分子イメージングにより適した8~9um帯へ高効率に拡張することに成功した。また、中赤外線励起位相差顕微鏡による分子イメージングの技術的実証を行った。これらの成果から、電子制御波長可変中赤外線レーザー光源を用いた生体内分子イメージング技術を構築する為の基礎的な技術を確立したと言える。
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