研究課題/領域番号 |
21K04989
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
樋山 みやび 群馬大学, 大学院理工学府, 准教授 (90399311)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ケージドルシフェリン / 光開裂量子収率 / 光開裂断面積 / 光褪色量子収率 / 光褪色断面積 |
研究実績の概要 |
光照射によりホタルルシフェリン(以下、ルシフェリンとする)を生成するケージドルシフェリンは、生体内in vivoイメージングへの応用が期待される。この光照射型ケージドルシフェリンに対して、光照射によるケージド基開裂過程の詳細を明らかにし、ケージド化合物の評価方法を確立するためには、高純度の結晶が必要である。当研究室にて独独自に開発したケージドルシフェリン7-diethylaminocoumarin-4-yl)methyl-caged D-luciferin (DEACM-ケージドルシフェリン)に対して、純度測定・吸収測定・光解離実験を行う必要があるため、まず、DEACM-ケージドルシフェリン合成方法の改良を試みた。その結果、これまでよりも多く(112mg)、さらに、純度の高い(約96%)化合物の合成に成功した。 2021年度に、標準的なホタル生物発光の発光量子収率は41%であること、および、発光量(生物発光スペクトルのスペクトル積算値)からルシフェリン の分子数を見積もることができることを示した。そこで2022年度は上記の生物発光方法を利用し、光照射したDEACMケージドルシフェリンから生成したD-ルシフェリンの分子数を定量した。照射光には、水銀ランプと405nmおよび325nmのフィルターを組み合わせ、405nmと325nmの光を用いた。DEACMケージドルシフェリンから生成したD-ルシフェリン分子数と光照射時間の関係から、光開裂を定量的に示す物理量である光開裂量子収率および光開裂断面積を決定した。その結果、DEACMケージドルシフェリンの光開裂量子収率は325 nm光照射の場合5.41×10-4、405 nm であり光照射の場合6.23×10-5 であることがわかった。すなわち、ケージド化合物の定量的な評価方法を確立することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の遂行において最も重要なサンプルであるDEACM-ケージドルシフェリンについて、合成方法を改良し、これまでよりも高純度な化合物の合成に成功した。また、前年度に確立したD-ルシフェリンの定量測定方法を用いて、新たに合成した高純度DEACM-ケージドルシフェリンの光解離過程を定量的に調べることができた。さらに、これらの研究成果について、査読付きの論文としてJournal of Photochemistry and Photobiology A: Chemistryに投稿し、受理された。
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今後の研究の推進方策 |
これまで、水銀ランプを用いて光照射実験を行ってきたが、超高速時間分解分光系を構築するためには、単一波長の光を発信できる装置を用いる必要がある。そこで、今回得られた結果に基づき、LEDやレーザーを用いた光照射系を構築し、DEACM-ケージドルシフェリンの光解離過程を調べる。また、反応途中の変化を測定するために、紫外・可視吸収の利用以外に、結合状態を直接観測することができる軟X線の利用についても検討する。
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