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2021 年度 実施状況報告書

励起状態化学反応解析のための量子多成分系理論の確立と応用計算

研究課題

研究課題/領域番号 21K04991
研究機関岐阜大学

研究代表者

宇田川 太郎  岐阜大学, 工学部, 助教 (70509356)

研究分担者 兼松 佑典  広島大学, 先進理工系科学研究科(工), 助教 (10765936)
研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2024-03-31
キーワード同位体効果 / 原子核の量子効果 / 多成分系理論 / プロトン移動反応 / 励起状態プロトン移動反応
研究実績の概要

本研究では、申請者が開発してきた、水素原子核の量子揺らぎを直接取り込んだ量子多成分系理論による化学反応解析法(量子多成分系CI-NEB法)を深化させ、電子基底状態のみならず電子励起状態の化学反応をも取り扱える新しい量子多成分系理論を確立する。具体的には、1. 量子多成分系時間依存密度汎関数理論(TDDFT法)の開発を通じ、 水素原子核の量子揺らぎを直接考慮した電子励起状態計算を実現する。さらに、2. 量子多成分系凍結ストリング法を開発することで、電子励起状態の化学反応解析に向けた量子多成分系 CI-NEB法の高速化を達成し、量子多成分系理論による化学反応解析の適用対象を劇的に拡大する。開発した計算手法を用い、3. 8-ヒドロキシキノリンおよび10-ヒドロキシベンゾキノリン中で起こる励起状態プロトン移動反応の、水素原子核の量揺らぎを考慮した解析を実現する。さらに、4. 開発した手法を用い、励起状態二重プロトン移動反応や多段階励起状態プロトン移動反応についても、水素原子核の量子揺らぎを考慮した解析を初めて実現する。
本年度は、項目1および2を実施した。まず項目1については、予定通り問題なく遂行することができ、量子多成分系理論をTDDFT法に拡張することができた。これにより、原子核の量子効果を含めた電子励起状態の計算が可能となった。次に項目2に取り掛かった。項目2では、凍結ストリング法の実装および精度向上に取り組んだが、このうち精度の向上ついては、当初考えていた方法では精度の向上が達成できないことが序盤で明らかになった。そこで他の手法に切り替え、試行錯誤した結果予定していた精度向上を達成することができた。また、項目3にもとりかかりはじめた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

R3年度は、項目1および2を実施した。項目2は、R4年度までかかる予定であったが、予定よりも早く遂行することができた。そのため、R4年度から取り掛かる予定であった項目3についても、取り掛かり始めることができた。これらのことを総合的に勘案し、おおむね順調に進展していると判断した。

今後の研究の推進方策

R4年度は、申請書に記載した予定通り、項目3. 8-ヒドロキシキノリンおよび10-ヒドロキシベンゾキノリン中で起こる励起状態プロトン移動反応の、水素原子核の量揺らぎを考慮した解析を遂行する。項目1, 2が予定より早くおわっていることから、既に項目3には取り掛かり始めており、予定通りR4年度中に遂行することが可能であると考えている。
また、項目4. 開発した手法による励起状態二重プロトン移動反応や多段階励起状態プロトン移動反応の解析についても、予定通りR4年度途中から取り掛かる予定である。

次年度使用額が生じた理由

配分金額の変更に伴い、当該年度に計算機クラスターの購入に充てられる金額にも変更が生じ、購入台数の調整を行ったため。また、コロナ禍で学会がオンサイトもしくはオンラインで開催されるかの見通しが立たず、旅費の執行が難しかったため。次年度は学会参加が増える予定であるため、その旅費等に使用する予定である。

  • 研究成果

    (11件)

すべて 2022 2021 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Competitive nuclear quantum effect and H/D isotope effect on torsional motion of H2O2: An ab initio path integral molecular dynamics study2022

    • 著者名/発表者名
      Udagawa Taro、Kuwahata Kazuaki、Tachikawa Masanori
    • 雑誌名

      Computational and Theoretical Chemistry

      巻: 1208 ページ: 113542~113542

    • DOI

      10.1016/j.comptc.2021.113542

    • 査読あり
  • [雑誌論文] H/D Isotope Effects in Keto-Enol Tautomerism of β-Dicarbonyl Compounds ?Importance of Nuclear Quantum Effects of Hydrogen Nuclei?2021

    • 著者名/発表者名
      Udagawa Taro、Murphy Rhys B.、Darwish Tamim A.、Tachikawa Masanori、Mori Seiji
    • 雑誌名

      Bulletin of the Chemical Society of Japan

      巻: 94 ページ: 1954~1962

    • DOI

      10.1246/bcsj.20210083

    • 査読あり / 国際共著
  • [学会発表] 軽水素含有有機化合物と重水素含有有機化合物の挙動の違いに関する理論的研究2021

    • 著者名/発表者名
      森聖治、宇田川太郎、立川仁典
    • 学会等名
      トリチウム研究会 2021
  • [学会発表] 励起状態分子内プロトン移動反応に対するH/D同位体効果の理論的解析2021

    • 著者名/発表者名
      服部郁美、兼松佑典、石元孝佳、立川仁典、宇田川太郎
    • 学会等名
      第1回若手重水素研究会
  • [学会発表] 経路積分分子動力学法を用いたFujikurin D中の分子内水素結合構造に関する理論的解析2021

    • 著者名/発表者名
      田中輝、桑畑和明、立川仁典、宇田川太郎
    • 学会等名
      第1回若手重水素研究会
  • [学会発表] 改良Freezing String法を用いた遷移状態構造探索の高速化2021

    • 著者名/発表者名
      柴田晴矢、立川仁典、宇田川太郎
    • 学会等名
      第11回CSJ化学フェスタ
  • [学会発表] 分子内プロトン移動反応に対する水素原子核の量子効果とH/D同位体効果の理論的解析2021

    • 著者名/発表者名
      服部郁美、兼松佑典、石元孝佳、立川仁典、宇田川太郎
    • 学会等名
      第11回CSJ化学フェスタ
  • [学会発表] 経路積分分子動力学法を用いたカチオン化したサリチルアルデヒドの分子内水素結合構造に関する理論的解析2021

    • 著者名/発表者名
      田中輝、桑畑和明、立川仁典、宇田川太郎
    • 学会等名
      第52回中部化学関係学協会支部連合秋季大会
  • [学会発表] 経路積分分子動力学法を用いたFujikurin A-D中の分子内水素結合構造に関する理論的解析2021

    • 著者名/発表者名
      田中輝、桑畑和明、立川仁典、宇田川太郎
    • 学会等名
      日本コンピュータ化学会2021年秋季年会inつくば
  • [学会発表] Metal-doped carbon nanocones as highly efficient catalysts for hydrogen storage: nuclear quantum effect on hydrogen spillover mechanism2021

    • 著者名/発表者名
      Nuttapon Yodsin, Hiroki Sakagami, Taro Udagawa, Takayoshi Ishimoto, Siriporn Jungsutiwong, Masanori Tachikawa
    • 学会等名
      6th Japan-Thai Online-Workshop on Theoretical and Computational Chemistry
    • 国際学会
  • [備考] 岐阜大学工学部化学・生命工学科 纐纈・宇田川研究室

    • URL

      https://www1.gifu-u.ac.jp/~kulab/

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公開日: 2022-12-28  

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