研究課題
有機熱電材料の開発を目的として、低熱伝導率、低次元性、強相関電子系という特徴を持つ有機物に着目し、主に以下の成果を得た。1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)をN-アルキル化したCnDABCOカチオン(Cn = CnH2n+1, n = 2-10)を対成分とするTCNQラジカルアニオン塩の開発を行った。部分電荷移動錯体として、n = 2-7の場合には、組成比1:2の(CnDABCO)(TCNQ)2が得られたが、n = 8-10の場合には、組成比1:2の塩は得られず、(C8DABCO)2(TCNQ)5、(C8DABCO)4(TCNQ)9、(C9DABCO)2(TCNQ)5、(C10DABCO)(TCNQ)3が得られた。得られた塩は全て半導体的導電挙動を示したが、n = 2-7の塩は、0.1-10 S cm-1オーダーの高い室温導電率を示す一方、n = 8-10の塩は、0.0001-0.001 S cm-1オーダーの室温導電率であった。また、n = 2-7の塩の磁化率の温度依存性について、低次元局在スピン系の挙動が観測されたことから、これらの塩は電子相関により電荷が局在化した低次元強相関電子系であると考えらえる。現在までに熱電材料の性能を示す無次元性能指数が0.1以上の物質は得られていないが、(C6DABCO)(TCNQ)2は、0.4 W m-1 K-1程度の低い室温熱伝導率を示した。(C6DABCO)(TCNQ)2では、典型的な分子性導体で見られるような、TCNQの1次元積層カラムやC6DABCOとTCNQのカチオン/アニオン相互作用に加えて、C6DABCOのヘキシル基同士の接近が観測されている。すなわち、ヘキシル基間に働く分散力という弱い超分子相互作用が結晶中に導入されたことにより、熱電材料に必要な熱伝導率の低減が達成されたと考えられる。
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