研究課題/領域番号 |
21K05005
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研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
清水 正毅 京都工芸繊維大学, 分子化学系, 教授 (10272709)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 蛍光 / りん光 / 二重発光 |
研究実績の概要 |
市販のジメトキベンゼンから、ヨウ素化、ジリチオ化、炭酸ガスへの付加によるカルボキシル化、ワインレブアミド化、グリニャール付加、脱メチル化を経て、1,4-ジベンゾイル-2,5-ジヒドロキシベンゼンを調製したのち、フェノール性水酸基をクロロメチルシランによるシリルメチル化とクロロシランを用いたシリル化することにより、対応する1,4-ジベンゾイル-2-シロキシ-5-(シリルメチルオキシ)ベンゼンを合成した。得たジベンゾイルベンゼンは、室温真空下において緑色(発光極大波長500-511ナノメートル)のりん光を良好な量子収率(Φ=0.40-0.58)、ミリ秒オーダーの寿命(4.4-64 ms)で発することを明らかにした。また、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)薄膜に分散した状態においても、このジベンゾイルベンゼンは室温真空下、同様に緑色りん光を発することを見出した。その場合、量子収率は0.07-0.11、発光寿命は17-79ミリ秒であった。以前に、1,4-ジベンゾイル-2,5-ジシロキシベンゼンは結晶状態では緑色りん光を示す一方、PMMA薄膜中ではりん光を全く示さなかったこと、1,4-ジベンゾイル-2,5-ビス(シリルメトキシ)ベンゼンは結晶状態とPMMA薄膜分散状態の両方で室温りん光を示すことを明らかにしていたが、高分子薄膜に分散した状態でも室温りん光を実現するのに、シリルメトキシ基は一つでも十分であることが明らかになり、りん光性高分子材料の創製指針として有用な知見が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実績の概要で述べたように、1,4-ジベンゾイル-2-シロキシ-5-(シリルメチルオキシ)ベンゼンが結晶状態および高分子薄膜に分散した状態で室温りん光を示す材料となることを明らかにした。また、電子供与基としてシリル基置換アリールオキシ基を有する1,4-ジベンゾイルベンゼンの結晶が、室温真空下において緑色りん光を量子収率0.36で示すことも明らかになり、含ケイ素アリールオキシ基をドナーとする分子設計の有効性を確認できた。以上のことから、概ね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
分子内電子的相互作用による励起三重項状態の安定化を意図した分子設計を基盤にして、シリル基置換アリールオキシ基を有する1,4-ジベンゾイルベンゼン、2,5-ジオキシ-1,4-ビス(オルト位置換アロイル)ベンゼンを基盤とするりん光材料および蛍光ーりん光二重発光材料の開発を継続するとともに、2,5-ジメトキシテレフタル酸ジエステルの二重発光性の解明を進めていく計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
標的分子の合成中間体の一種である2,5-ジメトキシテレフタル酸ジエステルが、室温真空下、青色蛍光と緑色りん光の二重発光を示すことを予期せず見つけた。蛍光-りん光二重発光材料は、蛍光を内部標準とするレシオメトリックセンシング用プローブとして、酸素センシングや温度センシングに有用である。そこで、この系についても蛍光-りん光二重発光性を詳しく調べることにしたので、次年度の研究費使用が生じた。繰り越した586,530円は、標的分子の合成に必要な消耗品(有機溶媒、薬品、触媒、ガラス器具、プラスチック 器具など)に400,000円を充当し、残りは合成した分子の物性評価のための消耗品(分光測定用の溶媒、プラスチック器具、分光用セルなど)の購入に充てる計画である。次年度分として請求した助成金は、引き続きアリールオキシ基を電子供与基とするりん光材料やオルト位置換アロイル基を電子求引基とするりん光材料の合成と評価に必要な消耗品の購入に充てる計画である。
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