研究実績の概要 |
市販の2,5-ジブロモパラキシレンを過マンガン酸カリウムで酸化してジブロモテレフタル酸を調製し、これに塩化チオニルを作用させて対応する酸塩化物に導いたのち、メトキシメチルアミン塩酸塩を反応させてワインレブアミドへと変換し、これにPhMgBrを作用させて対応するジベンゾイルジブロモベンゼンを合成した。続いて、このジブロモベンゼンに対してFinkelstein反応を行なって対応するジヨードベンゼンにしたのち、銅触媒を用いてオルトブロモフェノールをカップリングさせた。得たビス(オルトブロモフェニル)体を再度Finkelstein反応を用いてヨード体に変換し、最後にパラジウム触媒を用いてジアリールシリル化を行い、対応する2,5-ビス(2-シリルフェノキシ)-1,4-ジベンゾイルベンゼンを合成した。得たジベンゾイルベンゼンは、結晶状態において室温真空下、緑色(発光極大波長492-514ナノメートル)のりん光を良好な量子収率(Φ=0.36-0.52)、ミリ秒オーダーの寿命(45-55 ms)で発することを明らかにした。また、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)薄膜に分散した状態においても、このジベンゾイルベンゼンは室温真空下、同様に緑色りん光を発することを見出した。なお、量子収率は0.02-0.03、発光寿命は33-64ミリ秒であり、結晶状態と比較して量子収率が大幅に低下した。PMMAに分散したことで分子振動が結晶状態よりも大きくなり、励起三重項状態が熱失活したためと考えている。シリル基が臭素やヨウ素に代わった類縁体は室温でりん光を示さなかったので、フェノキシ基の2位に置換するシリル基の存在が室温りん光の発現に必須であることがわかる。エーテル酸素上に生成するオキシラジカルが近接するシリル基の炭素-ケイ素σ結合との超共役により安定化を受けているためと考察している。
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