研究課題/領域番号 |
21K05008
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
山中 淳平 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(薬学), 教授 (80220424)
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研究分担者 |
奥薗 透 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(薬学), 准教授 (10314725)
豊玉 彰子 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(薬学), 准教授 (50453072)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | コロイド粒子 / コロイド結晶 / 静電相互作用 / ダイヤモンド格子 / 静電吸着 / フォトニック結晶 / 光学材料 / 光学素子 |
研究実績の概要 |
サブミクロンからミクロンサイズの構造周期を持つ、ダイヤモンド型の結晶格子は、可視および赤外光を閉じ込める「完全フォトニック結晶」として働くことが知られ、実用化が待望されている。本研究では、最近開発した「2次元の負荷電コロイド結晶」を第1層とし、その上に正・負の荷電コロイド粒子を交互積層する新規手法を用い、数層以上の繰り返し単位を持つ、シート状ダイヤモンド格子を構築する。本研究では粒子間の相互作用と摩擦力を最適化することで、光学特性評価が可能な、一辺がmm以上の断面を持つ格子を作製するための方法論を確立する。 令和3年度は、粒子間静電相互作用と摩擦力の調節による2層目構造の大面積化を検討した。表面修飾が容易なシリカ粒子(市販)を一層目として用いた。また、カチオン性のシランカップリング剤を用い、正電荷を導入したシリカ粒子を2層目粒子に用いた。顕微鏡観察により1、2層目を識別するため、2層目粒子には赤色蛍光色素を導入した。各層の粒子サイズは500nmおよび1μmの2種類とした。 まず、基板の表面電荷数を最適化し、1層目粒子(負に荷電)のコロイド結晶を、mm オーダーの領域に渡って吸着させることに成功した。次に、2層目粒子の吸着位置に対する添加塩濃度依存性を検討し、2層目粒子の規則性(ボンド配向パラメーター)が完全に規則的な場合の90%に達する積層構造を得た。現状ではおよそ100μm四方に渡って規則的に2層目が吸着した構造が得られている。 このほか、界面活性剤や高分子を添加して粒子表面を修飾し、粒子間の摩擦力を調整する手法を検討しているが、複数の粒子を橋渡しして凝集を生じる場合があり、濃度条件などを改善する必要がある。 また、当初は2年目以降に計画していたが、平面波展開法によるバンド構造の計算を開始した。単層ダイヤモンドのフォトニックバンドの周波数域と粒径、屈折率の関係について、予備的な結果を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
大面積の1層目および2層目の作製に関して、概ね予定通り進捗している。1層目については、当初予定していたmmサイズを達成し、また2層目についても 0.1mmにまで達した。3層目の吸着についてはまだ十分検討できておらず、次年度以降の課題とする。また、界面活性剤の吸着や高分子修飾による構造の秩序性の向上については、継続検討とする。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度以降は、3層目の吸着および界面活性剤や高分子修飾の効果を継続して検討し、大面積の3層目が得られ次第、当初予定していた多層化の検討を開始する。また、分光法による光学特性の評価に着手する。すでに、顕微分光法により、直径が10μm―100μm程度の円形の領域の透過および反射分光測定を行なっており、バンド計算の結果を参照しながら研究を進める。直径が500nmから1μmの粒子のダイヤモンド格子の回折波長は、バンド計算によると1.6μmから3.2μmと見積もられ、赤外反射分光測定で検出でき、予定しているダイヤモンド構造の生成を分光測定により確認する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究では、粒子の合成または表面修飾、精製、電荷数などの決定、構造形成事件、のサイクルで実験を行い、結果をフィードバックして次の試料を準備する。消耗品である試薬類の多くは、粒子合成の際に使用する。本年度末に、当座の実験には十分な粒子試料が確保された状態となり、また試薬等は次年度の粒子合成などの検討に利用したかったため、初年度の研究費のうち30万円余を繰越金とした。
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