研究課題/領域番号 |
21K05009
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
田島 裕之 兵庫県立大学, 理学研究科, 教授 (60207032)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 蓄積電荷測定法 / 電荷注入障壁 / ACM / 有機デバイス / フタロシアニン / ペンタセン |
研究実績の概要 |
本研究課題はH30-R2年度(1年間延長したためH30-R3年度)科研費「蓄積電荷測定法による有機/金属界面の電荷注入障壁測定」に関する継続課題であり、蓄積電荷測定法の開発を継続し、電荷注入が不完全となる現象の起源を明らかにするというものである。R3年度前半では以前の科研費研究のまとめとして、Poisson-Boltzmann方程式を用いた理論計算による実験データの解析を行い、蓄積電荷測定で得られるデータは、熱平衡型の電荷抽出を仮定して解釈できる場合と、非熱平衡型の電荷抽出を仮定して解釈できる場合の2通りがあることを初めて明らかにした。(J.Appl.Phys.誌に掲載)本研究課題では、この成果に基づき測定スキームを見直した結果、これまでできなかったギャップの大きな系での電荷注入障壁の測定を行うための「改良された測定手法」を開発することに成功した。またこの改良された測定手法を用いて、ペンタセンおよびフタロシアニンの電子注入障壁を決定することに成功した(いずれもおよそ2.1 eV)。またS-DNTT-10およびC8-BTBTの正孔注入障壁測定、バイアスストレスに由来するポテンシャル測定を行った。さらに、分極した自己組織化膜の作るポテンシャル測定にも成功した。新しい実験手法は、界面にできる電荷トラップの影響をキャンセルして電荷注入障壁を求めることができるので、本研究で目指している蓄積電荷測定法の一般化につながる第一歩といえる。これらの実験結果については、現在論文として公表するためにデータを取りまとめている段階である。また上記の研究と合わせて、whispering gallery mode共鳴を用いた発光実験を行い、論文発表行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
蓄積電荷測定で得られるデータに、熱平衡型の電荷抽出を仮定して解釈できる場合と、非熱平衡型の電荷抽出を仮定して解釈できる場合の2通りがあることが分かったのは、非常に大きな研究の進展であった。さらにこの解釈に基づいて、電子注入障壁の決定や、ギャップの大きな系での注入障壁決定法を開発できたことは、当初の計画以上の進展といえる。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度に行った研究成果は、独立のテーマとなるため、3つの別々の論文として公表する準備を現在行っている。ギャップの大きな系での実験は、始まったばかりなので他の物質系でも実験を試みる。またこれまで行っていなかった、イオン化ポテンシャルの大きな電極の開発を試みる。また不完全注入現象の解明を目指した実験を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウィルスの流行により出張が制限されたため、旅費に残を生じた。またこの研究課題は前年度が最終年度であった研究課題を実質上継続するためのものであったため、研究課題延長による研究費の残を有効に活用できたことも次年度使用額が生じた理由である。国際会議を含めた、対面方式による学術会合は、今年度から順次再開される見通しであるので、研究費の残は旅費として有効に活用できると考えている。
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