研究課題/領域番号 |
21K05020
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
高橋 雅樹 静岡大学, 工学部, 教授 (30313935)
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研究分担者 |
藤本 圭佑 静岡大学, 工学部, 助教 (10824542)
平本 昌宏 分子科学研究所, 物質分子科学研究領域, 教授 (20208854)
伊澤 誠一郎 分子科学研究所, 物質分子科学研究領域, 助教 (60779809)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ペリレンジイミド / フレキシブル構造 / アクセプタ材料 / 湾曲構造 / n型半導体 / 有機薄膜太陽電池 |
研究実績の概要 |
初年度では、フレキシブルグラフェンナノリボンの基本構造となるペリレンジイミド構造体の構築法確立に向けた検討を進めた。過去に当研究室で開発したペリレン核への選択的臭素化を活用することでペリレンジイミド構造のベイ位置を選択的に修飾し、最終段階においてパラジウム触媒での渡環反応によるオキセピン環を構築することで、目的とする単核構造体へと誘導できた。この構造体に導入された湾曲構造については、単結晶X線構造解析にて明確に確認できたことに加え、その構造柔軟性については、温度可変核磁気共鳴分析により評価した。市販のPTB7-Thをドナー材料として用いた有機薄膜太陽電池デバイスの性能評価により、この単核構造体のアクセプタ材料としての性能評価を試みたところ、ベイ位置が修飾されていないペリレンジイミドと比べ、優れた溶解性を示すことに加え高い発電性能を示したことから、フレキシブル構造を導入したペリレンジイミド構造体はn型半導体として優れた性能を与えることが示された。これらの研究成果をもとに、ペリレンジイミド二量体の合成法について検討を試みた。2つのペリレン核をつなぐスペーサとしてヒドロキノンを用いつつ、単核構造体の合成法を踏襲することで検討を進めたところ、反応過程に必要となる芳香環への臭素化において一部選択性が失われ、複雑な混合物を生じることが判明した。このため、最終段階に相当する渡環反応に至るまでの合成過程において、反応条件の修正と最適化が必要であることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の研究計画では、ペリレンジイミド単核構造体への合成過程の確立とペリレンジイミド二量体の合成法について検討することを主たる目標とした。本研究計画で想定した合成過程では、オキセピン環構築を伴う渡環反応の成否が鍵となっていたが、最適なパラジウム触媒を選定し利用することで効率良く行うことができた。また、有機薄膜太陽電池デバイスの作製と評価においては、当該化合物が想定通り優れた溶解性を示したことから、本化合物の利用が溶液プロセスにおいて有利であり、その性質を反映して良好な発電性能を示したと判断される。また、ペリレンジイミド二量体の合成法に関する検討については、合成経路上必要となる合成中間体が低収率ながら生成していることが確認されているので、反応条件の最適化により問題解決に至ると判断している。上記の通り、現段階において、当初想定した化合物合成が円滑に進んでおり、化合物の物性も想定した内容であることから、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
ねじれ型ペリレンジイミド単核構造体の合成と評価が達成できたことから、今後はさらなる進展を目指し、フレキシブル構造の多様化を検討する予定である。一方で、ペリレンジイミド二量体の合成過程を検討するうえで、渡環反応の前段階である芳香環の臭素化反応において十分な選択性が発現しないことが判明したことから、今後の研究展開においては、ねじれを誘起するために導入する構造部位の選択を精査することが重要であり、合成可能なフレキシブル構造を明確化することが課題である。これらの課題解決を図りつつ、フレキシブルグラフェンナノリボンの多様化を検討し、それらのn型半導体としての性能評価を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度では化合物合成を中心に研究活動を行ったことから、主として実験に必要となる消耗品や化学薬品を購入するために経費を使用した。これらの消耗品や化学薬品の購入に際しては、経済的な効率性を高め執行できたことから、当初計画より低い使用額となった。次年度においては、化合物合成の最適化等を中心に検討する予定であり、今年度よりも消耗品購入経費が必要とされると想定されるため、当該年度の残額については、次年度の消耗品購入費に充てることで効率的な経費運用を図ることとした。
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