研究実績の概要 |
本課題では新たな合成法に基づいて電子供与性あるいは電子求引性置換基をもつヘキサアリール置換s-インダセン誘導体を合成し、X線構造解析に基づく分子構造、酸化還元特性や分光学的性質を調査し、機能性物質としての利用の可能性を調べることを目的としている。 2021年度は、川瀬らの開発した5員環融着法を用いて、特定の位置に電子供与性あるいは電子求引性置換基をもつ1,2,3,5,6,7-ヘキサアリール置換s-インダセン誘導体の合成法の開拓を行った。その結果、計画通りに1,4-位、1,8-位、2,6-位に電子求引性の4-(トリフルオロメチル)フェニル基あるいは電子供与性の4-メトキシフェニル基が置換し、その他の4つの位置に電子的にフェニル基あるいはキシリル基が置換したC2h-、C2v-、D2-対称形のヘキサアリール置換s-インダセン誘導体を市販物から4段階で合成することに成功した。また、熱分析実験からこれらが電子材料への応用に耐えうる熱安定性を有することを確認した。 量子化学計算に基づく電子状態予測と分光学的および電気化学的計測に基づき、置換基の電子的性質と置換パターンによる分子軌道のエネルギー準位の変化のみならず、s-インダセンに特有の電子配置に起因する分子軌道の摂動が起こることを見出した。さらに、量子化学計算から分子構造のゆがみに対する置換基効果が予測された。この点を検証すべく、2種類の化合物に関してX-線構造解析を行った。
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